1.胚芽の部域間のレチノイン酸の濃度の相違をいくつかの方法で調べた。 (1)レチノイン酸は細胞培養した肢芽先端部の中胚葉細胞の軟骨分化を促進することが既に示されているので、この軟骨分化を指標にして、肢芽部域間のレチノイン酸の濃度の相違を調べた。その結果、レチノ-ル存在下で肢芽の後半部の濃度が高くなること、つまり後半部ではレチノ-ルからレチノイン酸に代謝する酵素活性が高いことが示された。 (2)レチノイン酸に対するモノクロ-ナル抗体を作成して、その分布を調べたところ、外胚葉直下100ミクロン以内の中胚葉に強い分布が見られた。この抗体は、レチノ-ルとも反応するので、この分布がすべてレチノイン酸であるとは必ずしも言えないが、ラベルしたレチノイン酸の分布も同じパタ-ンを示すので、この分布は肢芽内でのレチノイン酸の分布を示している可能性が高い。しかし何れの場合にも前後軸にそった濃度勾配は見られなかった。 (3)既に報告されている肢芽内でのレチノイン酸の濃度勾配は、部域の取り方に問題があるので、現在、追試を試みている。 2.前述のように、レチノイン酸によって、肢芽先端部の中胚芽葉細胞の増殖と軟骨分化が促進される。この時最初に分子レベルで何が起こるのかを明らかにするために、タンパク合成を二次元電気泳動で調べた。その結果、分子量約18Kのタンパクの合成がレチノイン酸投与後6時間で急速に増加することが解った。現在、このタンパクの同定を急いでいる。
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