鶏胚肢芽の軟骨パタ-ン形成の分子機構に関する研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480023
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 井出 宏之 東北大学, 理学部, 助教授 (70022704)
• 研究分担者: 大椙 弘順 東北大学, 理学部, 助手 (00201377)
• キーワード: レチノイン酸 / 肢芽 / パタ-ン形成 / 軟骨分化

研究概要

ニワトリ胚肢芽の前後軸を作るZPA因子としてレチノイン酸(RA)が考えられてきたが、RAがZPAから出ていないことを示す以下のような結果を得た。
1.抗レチノイド抗体による蛍光抗体法、放射性RAのオ-トラジオグラフィ-により、肢芽内でのRAの濃度勾配は認められなかった。
2.RAによって肢芽で誘導されるRARbetaの発現は、ZPA周辺部、移植されたZPAの周辺組織で認められなかった。
3.肢芽先端部細胞のRA処理で起こる軟骨分化促進はZPAとのcocultureでは起こらなかった。
さらに次の結果から、RAは周囲の細胞をZPA化することによって重複肢を作ると考えられる。
1.RAを含むビ-ズで処理した肢芽前端部の組織片を別の胚の前端部に移植することにより、高頻度に重複肢を得た。
2.RA処理した肢芽先端部の細胞を集めて肢芽前端部に移植すると、重複肢ができた。
従って、先端部細胞のRA処理でおこる分子量130Kのタンパクの合成促進は、ZPA化とも関係づけられる。このタンパクは肢芽内で二次元泳動ー銀染色で検出できる程度に存在することが解ったので、抗体を得ることを試みている。
四肢の基部ー先端部軸方向のパタ-ン形成に関与する進行帯の時間的変化の原因のひとつとして、細胞の凝集能の変化を明らかにした。
部域的発現を示す抗体AVー1の構造決定については、精製したタンパクのアミノ酸配列を一部決定した。

研究成果

• [文献書誌] Ide,H.: "Growth and differentiation of limb bud cells <in vitro>___ー:Implications for limb pattern formation." Deveop.Growth & Differ.32. 1-8 (1990)
• [文献書誌] Tamura,K.,Ohsugi,K.and Ide,H.: "Distribution of retinoids in the chick limb bud:Analysis with monoclonal antibody" Deveop.Biol.140. 20-26 (1990)
• [文献書誌] Tamura,K.,Kagechika,H.,Hashimoto,Y.,Shudo,K.,Ohsugi,K.,and Ide,H.: "Synthetic retinoids,retinobenzoic acids,Am80,Am580 and Ch55 regulate morphogenesis in chick limb bud." Cell Differ.and Develop.32. 17-26 (1990)
• [文献書誌] Noji,S.,Nohno,T.,Koyama,E.,Muto,K.,Ohyama,K.,Aoki,Y.,Tamura,K.,Ohsugi,K.,Ide,H.,Taniguchi,S.,and Saito,T.: "Retinoic acid induces polarizing activity but is unlikelyto be a morphogen in the chick limb bud." Nature. 350. 83-86 (1991)
• [文献書誌] Yokouchi,Y.,Ohsugi,K.and Ide,H.: "Control of the expression of AVー1 protein,a positionーspecific antigen,by ZPA (Zone of Polarizing Activity) factor in the chick limb bud" Develop.Growth & Differ.
• [文献書誌] Ide,H.,Ohkubo,Y.,Noji,S.and Taniguchi,S.: "Retioic acid and limb pattern formation in cell culture.<In>___ー Developmental patterning of the vertebrate limb (ed.Hinchliffe et al.)" Plenum,