鶏胚肢芽の軟骨パタ-ン形成の分子機構、特に前後軸方向のパタ-ンに対するレイノイン酸(RA)の作用について解析を行った。得られた新しい知見は以下のとおりである。 1.RAによる重複肢形成の際の最初のRAの作用は肢芽前端部組織のZPA(極性化活性域)化であった。ZPA化されうる領域は、肢芽前半部のAER(外胚葉性頂堤)直下の領域に限られ、ZPA化は重複肢形成とは独立に起こった。 2.ZPA化はウズラ肢芽の培養細胞でも起こることが明らかになった。ウズラ肢芽の前半部の細胞を100ng/mlのRAで24時間処理し、ニワトリ肢芽に移植して重複肢を作り、移植片がZPAとして作用していることを明らかにした。 3.RAは肢芽先端部の中胚葉細胞の増殖と軟骨分化を促進するが、このRAに反応する領域は発生と共に四肢芽の前半部の周辺部に移り、前述のZPA化と同様の領域であった。この細胞をRA処理することによって、RARbeta mRNAが発現することがin situ hybridizationによって見いだされた。 4.RA処理した肢芽中胚葉細胞で6時間以内に発現が誘導される分子量180Kのタンパクは肢芽先端部の前半部分で作られることが明らかになった。RA濃度と誘導の関係から、このタンパクはZPA化に関係していると考えられる。
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