ホヤ胚における筋肉細胞分化の分子メカニズム

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480027
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 佐藤 矩行 京都大学, 理学部, 助教授 (30025481)
• キーワード: 筋肉細胞分化 / 分化決定因子 / ミオシン重鎖遺伝子 / アクチン遺伝子

研究概要

ホヤ胚における筋肉細胞分化の分子メカニズムについて本年度は次のような成果が得られた。
1.分化決定因子の解析:ユウレイボヤの末受精卵を軽く遠心すると灰色の卵片と赤色の卵片が得られた。このうち灰色の卵片を媒精して部分胚として発生させると、正常卵より3倍程高い筋肉分化が認められた。すなわち卵細胞質中に存在する筋分化決定因子が灰色卵片に濃縮したものと考えられる。そこで灰色卵片のRNAを赤色卵片に顕微注入して筋分化が誘導できるか否かを調べる実験を始めている。
2.調節遺伝子の解析:ホヤのMyoD様遺伝子の単離を試みているが、まだ成功していない。
3.筋肉細胞特異的遺伝子群の解析:(1)ミオシン重鎖遺伝子。約6Kbと予想される大きなmRNAのほぼ中央部にあたるcDNAクロ-ンを得て、この遺伝子産物が嚢胚期から予定筋肉細胞に限って発現することをすでに調べていたが、本年度はこのクロ-ンをもとに5'域および3'域をカバ-するいくつかのクロ-ンを得て、ホヤミオシン重鎖mRNAの全体像の解明を進めた結果、ほぼ全体像を明らかにするところまできた。
(2)筋肉アクチン遺伝子。マボヤ尾芽胚には少くとも三つの筋アクチンmRNAが存在する。そのうちの一つMA4の全塩基配列を決定した。またこの遺伝子のmRNAが雰胚期から予定筋肉細胞に限って発現することも明らかにした。現在あと二つのmRNAの塩基配列の決定とその発現パタ-ンの解析を進めている。またMA4についてはジェノミックライブラリ-をスクリ-ニングした結果、この遺伝子を含むと思われるクロ-ンを何個か得たので、塩基配列の決定による同定を急いでいる。

研究成果

• [文献書誌] Satoh,Noriyuki: "Cellular and molecular mechanisms of muscle cell differentiation in ascidian embryos" International Review of Cytology. 122. 221-258 (1990)
• [文献書誌] Makabe,Kazuhiro W.: "Specific expression of myosin heavy chain gene in muscle lineage cells of the ascidian embryo" Roux's Arch.Developmental Biology. 199. 307-313 (1990)
• [文献書誌] Kusakabe,Takehiro: "Temporal and spatial expression of a muscle actin gene during embryogenesis of the ascidian Halocynthia roretzi" Development,Growth & Differentiation. 33. (1991)
• [文献書誌] Satoh,Noriyuki: "Expression of muscle myosin heavy chain gene in quarter ascidian embryos" Journal of Experimental Zoology. (1991)
• [文献書誌] Marikawa,Yusuke: "Gray and red fragments of the egg of the ascidian Ciona savignyi:Preferential developemnt of muscle cells from gray fragments" Development,Growth & Differentiation. (1991)
• [文献書誌] Satoh,Noriyuki (Eds.)E.H.Davidson et al.: "Developmental Biology" WileyーLiss,New York, 388 (1990)
• [文献書誌] Satoh,Noriyuki (Ed.)G.M.Malacinski: "Cytoplasmic Orgamization System" McGrawーHill Publ.Co.,New York, 482 (1990)