両生類精子分化機構の分子生物学的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480029
• 研究機関: 熊本大学
• 研究代表者: 安部 眞一 熊本大学, 理学部, 教授 (90109637)
• キーワード: Cynops / spermatid / manchette / nuclear elongation / microtubules / MAPs / tubulin

研究概要

イモリ精細胞の核伸長における微小管束の役割
動物の精細胞の核が伸びるときには、一般に、微小管束が核の回りに形成される。この微小管束の役割については、核を積極的に伸ばすものだという意見と反対の意見があり、結論は出ていない。イモリ精細胞の核が伸長するとき、その回りには微小管が核の長軸と直角方向に配列し、核を取り囲む。この微小管の核伸長における役割を調べるため、イモリ精細胞の微小管の性質を調べた。その結果、精母細胞や丸い精細胞の微小管はCa^<2+>や低温処理によってすみやかに脱重合するのに対して、核が伸びかけた精細胞の微小管束は、Ca^<2+>や低温処理の極めて抵抗性があることが明らかになった。核が伸びかけた精細胞を多く含む精巣をホモジェナイズし、低温耐性分画から1MNaClによって抽出した分画(1MNaClSup)には、ブタ脳tubulinの重合促進活性と低温耐性化活性があることが明らかになった。この活性はtrypsin処理や熱処理によって失われ、phosphocellulose columnに吸着され、1M NaClによってeluteされる。また、強陽イオン交換体であるSーSepharoseでは吸着分画に、強陰イオン交換体であるQーSepharoseではflowーthrough分画に活性がみられる。これらの結果から、1M NaCl Supにはmicrotubuleーassociated proteins(MAPs)が含まれていることが明らかになった。SDSーPAGE像は、1M NaCl Supの主成分が76KDと59KDであることを示す。イモリ1M NaCl Supの量を一定にして、ブタ脳MAPsの量を変えて混合し、ブタ脳tubulinとの結合量を調べると、ブタ脳MAPsの量が増すにつれてイモリ1M NaCl Sup成分のうち76KDと59KDの結合量が直線的に減少した。この結果は、イモリMAPsは少なくとも76KDと59KDから成り、microtubuleとの結合部位はブタ脳MAPsのそれと共有するか、非常に近いことを示唆する。

研究成果

• [文献書誌] 安部 眞一: "In vitroにおける精子形成" 臨床科学(世界保健通信社). 27. 1701-1709 (1991)
• [文献書誌] Abe,SーI.and Hiyoshi,H.: "Synthesis of spermーspecific basic nuclear proteins(SPs)in cultured spermatids from Xenopus laevis." Experimental cell Research. 194. 90-94 (1991)
• [文献書誌] Hiyoshi,H.,Uno,S.,Yokota,T.,Katagiri,Ch.,Nishida,H.,Takai,M.,Agata,K.,Eguchi,G.and Abe,S.ーI.: "Isolation of cDNA for a Xenopus spermーspecific basic nuclear protemn (SP4) and evidence for expression of SP4 mRNA in primary spermatocytes." Experimental Cell Research. 194. 95-99 (1991)
• [文献書誌] Abe,S.ーI.,Uno,S.,Asakura,S.and Kubokawa,K.: "Inhibition of in vitro spermatogenesis from Xenopus laevis.by theophyline." Zoological Science. 8. 533-540 (1991)
• [文献書誌] Abe,S.ーI.and Uemura,M: "How is the flagellar length of mature sperm determined?III.Comparison of initial growth rate of flagella in spermatids from Cynops and Xenopus in the presence and absence of cycloheximide." Experimental Cell Research. 198. 373-374 (1992)
• [文献書誌] Mazaki,Y.,Hashimoto,K.and Abe,S.ーI.: "Stability of manchette(microtubule bundles)in newt elongate spermatids." Zoological Science. 8. 1065 (1991)
• [文献書誌] 安部 眞一: "精子学" 東京大学出版会(毛利秀雄監修), (1992)
• [文献書誌] Abe,S.ーI.: "Biology of Germ Lines" Japan Scientific Societies Press(Mohri,H.,Takahashi,M.,and Tachi,Ch.ed), (1992)