研究概要 |
余剩活性汚泥の嫌気性分解特性に及ぼす前熱処理の促進効果の解明およびTP/ADプロセスの最適化を図るために,62〜175℃での熱処理実験と35±1℃での回分および連続式嫌気性消化実験を通して,余剩活性汚泥の嫌気的分解に及ぼす熱処理条件と消化時間の影響を検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。1)熱処理に伴う活泥の可溶化、低分子化および固形有機物の熱変性によって,余剩活性汚泥の嫌気的分解率と消化ガス生量が向上されただけでなく,消化時間も10日以下に短縮できる。2)嫌気性消化の効率化ための最適熱処理条件には温度170℃。時間60分程度である。この条件では消化時間5〜10日におけるCOD除去率およびガス生成量はそれぞれ60%および223〜235ml/gー10Dであり,対価系より倍増した。3)滞留時間1.5日〜10日の汚泥消化槽におけるメタン生成菌の菌数は10^7〜10^8MPN/mlの範囲にある。 低温域における酸発酵特性に及ぼす温度とHRTの影響を検討するために,HRTを0.25日,0.5日,1.0日および2.0日に設定し,実験温度を10℃から30℃まで変化させて可溶性デンプンを基質とした連続実験を行った。その結果,以上のことが明らかとなった。1)炭水化物の分解率は温度とHRTにより大きく影響される。20℃以上の温度条件ではHRT1日で95%以上の炭水化物分解率が得られているのに対して,15℃以下の温度条件では炭水化物の分解率が急激に低下し,90%以上の分解率を得るためにはHRTを2日以上長くする必要がある。2)酸発酵により生成したUFAの主成合は酢酸,プロピオン酸および酪酸であり、その構成割合は温度とHRTによって異なる。3)酸生成菌およびメタン生成菌の菌数分布は温度とHRTによって大きく左右される。温度25℃以下,HRTが2日以下の条件で酸発酵を行う場合には、酢酸資化性メタン生成菌および水素資化性メタン生成細菌はほとんどwashoutされる。
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