研究概要 |
植物組織の無菌培養法によれば、作物の細胞分化および形態形成におよぼす生長物質の作用機作を細胞組織学的、あるいは生理生化学的手法により解明し、作物生育過程に於ける諸現象とその制御機構について、基礎的知見を加え得る。特に、馬鈴薯組織培養をモデルとし、その不定芽形成あるいは塊茎形成と細胞内澱粉や蛋白粒の蓄積と消費との因果関係の検討、細胞分裂周期などに及ぼす生長物質の作用に着目し、細胞分化・器管分化の過程とそれらの貯蔵物質の関係を解明する計画である。 馬鈴薯の塊茎形成についての生理学的研究により、その情報制御機構に関係あるとみられる脂肪酸誘動体を分離精製しその構造式を明らかにした。今後はこの物質の塊茎形成誘起の発生生理学的研究を遂行する。 馬鈴薯組織培養によるカルス形成、不定芽形成にも生長物質が組織分化に重要な役割を担っており、主に呼吸代謝の活性化,糖利用の増加は、NADP合成の活性化に基くことを示し、同時にDNA合成・細胞分裂の維持に作用すると示唆した。培地中のマンニット添加は細胞内浸透圧の増加を誘導し組織表皮に分裂中心を形成、不定芽を誘導する。この過程はさらに温度や照度などの環境要因のほか、生長物質の関与が明白で特異的遺伝子の発現が麦芽転写系によって観察された。 また馬鈴薯葉肉細胞のプロトプラスト培養においても生長物質が細胞分裂の誘起や植物体再生に重要な役割を担っており、人参培養細胞や水稲培養細胞の不定芽形成にも生長物質による制御が観察された。 培養細胞の分化とその代謝生理に関係して硝酸還元酵素の発現、セルラ-ゼ等細胞壁分解及び合成酵素の発現を検討している。これらの酵素活性は間接的に細胞の再分化、形態形成に関連すると考察されるので、遺伝子レベルまで検討したい。
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