北海道の主要作物である稲、馬鈴薯、人参はプロトプラストからの個体再生系が確立されている。水稲培養細胞の個体再生は硝酸還元酵素活性の誘導要因と協関する。さらに浸透圧、アブシジン酸、プロリンなど水分ストレスの生理活性物質を与えることによって再分化を助長できることを明らかにした。 しかしながらプロトプラスト培養からの再生個体においては変異が多く、しかもプロトプラストからコロニ-形成に至る初期培養過程において既に変異が生じている。初期培養過程における変異の解明やプロトプラストへの遺伝子導入、細胞融合などを行なえる均一で培養に適した材料が必要となる。 馬鈴薯プロトプラスト培養において細胞濃度1×10^4/m1で10^<ー6>M STS(チオ硫酸銀イオン)処理を行うと細胞分裂が上昇した。即ち細胞濃度が3×10^4/ml以上になるとほとんど分裂細胞が観察されなかった。しかし同じ細胞濃度でSTS処理を行った場合、若干分裂頻度が上昇した。プロトラスト培養においてもエチレンの関与が考えられる。またSTSの処理濃度が1×10^<ー5>M以上の場合コロニ-が形成されなかった。蛍光顕微鏡の観察ではSTS無処理の場合細胞壁が明暸に観察できたが、STS処理区では細胞壁が不鮮明で多核体が出現した。高濃度のSTSが植物体の成長阻害やプロトプラスト培養での細胞集塊の形成を抑制することがエチレンの濃度によるのか銀イオンの影響によるかは今後の課題である。 馬鈴薯の塊茎形成過程で発現するmRNAよりクロ-ニングしたcDNAの塩基配列を決定した。その結果これがトリプシンインヒビタ-であることが判明した。
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