作物培養細胞の分化に関する発生生理学的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480040
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 喜久田 嘉郎 北海道大学, 農学部, 教授 (90001445)
• 研究分担者: 藤野 介延 北海道大学, 農学部, 助手 (80229020) ; 幸田 泰則 北海道大学, 農学部, 助教授 (20002355)
• キーワード: 馬鈴薯 / 水稲 / タイヌビエ / 培養細胞の再分化 / 塊茎形成 / 不定胚形成 / トリプシンインヒビタ-遺伝子 / チュ-ブリン遺伝子

研究概要

作物の生育過程の解析に組織培養法を用い、細胞分化から不定胚、不定芽形成に至る植物体再生の過程の機序を、生長物質の作用と細胞分化との関連性において遺伝子工学及び細胞工学的手法の導入によって検討し、作物の器官分化や形態形成の制御機構を器官培養、細胞培養にまで単純化した系について発生生理学的に解析することを目的とした。
近年の遺伝子操作の進歩はめざましく、この方法による馬鈴薯植物の分子進化の研究を行い、今後の細胞工学の基礎資料を作成した。
培養細胞の分化および器官形成については、生長物質や培養条件と遺伝子の発現を観察するため、細胞骨格を決定するチュ-ブリン、セルラ-ゼ、ガラクチュロナ-ゼなどの遺伝子群のプロ-ブを作成した。
馬鈴薯は塊茎形成過程に発現するmRNAライブラリ-をデファレンシアルスクリ-ニングした結果トリプシンインヒビタ-遺伝子を得て、塩基配列を決定した。さらに、これをマ-カ-としてストロン頂端部の形態変化に伴う遺伝子の器官特異的発現について検討したところ、一部ジャスモン酸によって誘導されることが明かとなった。これは、昆虫抵抗性遺伝子としても期待できるので、今後とも遺伝子発現についてプロモ-タ-領域の研究をしたい。
イネ科雑草のタイヌビエの不定胚形成を観察した。また水稲培養細胞の再分化条件について検討、ABA、プロ-リンによる再分化能の維持を確認した。水稲培養細胞では再分化過程における硝酸還元酵素の活性化に強い相関があるので注目し、不定芽形成過程の遺伝子活性を調査している。
今後は、プロトプラストへの遺伝子の導入と発現について、抗体の作成、ベクタ-の作成を行ない細胞培養、脱分化・再分化による不定胚、不定芽形成などの過程で遺伝子の発現を解析したいと考えている。

研究成果

• [文献書誌] Koda Y,Kikuta Y,Tazaki H,Tujino Y,Sakamura S,Yoshihara T.: "Potato tuber inducing activities of jasmonic acid and related compounds." Phytochemistry. 30(5). 1435-1438 (1991)
• [文献書誌] Koda Y,Kikuta Y.: "Possible involvement of jasmonic acid in tuberization of yam plants." Plant Cell Physiology. 32(5). 629-633 (1991)
• [文献書誌] Kawagoe Y,Kikuta Y.: "Chlorolplast DNA evolution in potato(solanum tuberosum L.)" Theoretical and Applied Genetics. 81(1). 13-20 (1991)
• [文献書誌] Yamagishi K,Mitsumori Cris.Kikuta Y.: "Nucleotide sequences of a cDNa encoding the putative" Plant Molecular Biology. 17(3). 287-288 (1991)
• [文献書誌] Kikuta Y.: "Potato'evolves'slower than tomato." Rice Biotechnology Quarterly. 8(Oct):41. (1991)
• [文献書誌] Yamagishi K,Mitsumori Cris,Takahashi J,Fujino K,Koda Y,Kikuta Y.: "Jasmonic acid inducible gene expression of a Kunitz type proteinase inhibitor in potato tuber discs." Plant Molecular Biology. (1992)