地球外環境における作物生産を考えた場合、最も重要な問題は重力の作物生産にはたす役割を解明することである。常に重力が存在する地球上でこの問題を研究するには適当な実験系の確立が不可欠である。本研究においてはそのため、主要作物を用いてその実験系を確立することを第一の目的とし本年度はオオムギの異常な重力反応を示す突然変異系統を深索し、surpentinaと呼ばれる突然変異系統を用いて研究を行った。本系統は、節間伸長後植物体を地表面より高く保持すると、伸長した茎は正の向地性を示した。これは正常系統の場合、伸長茎を地表面と平行に保持すると節部で負の重力屈性を示して立ち上る場合と全く逆の反応で正の重力屈性を示す。節部の顕微切片による組織観察の結果、正常系統と全く逆に節の背地側の細胞層が伸長して大きくなっていることが判明した。 胚の位置が種々の位置をとるように種子を地表面に水平(表と裏)、垂直(上と下)あるいは直角におくと、正常系統は、負の重力屈性により第1葉は地表面にほぼ直角に調位するが、突然変異系統では、その能力に欠け胚が最初おかれた位置のまま伸長することが多く、第1本葉は地表と直角になるように調位できない場合が多かった。したがって、第間伸長以前の幼苗期の重力反応も異常を示した。 また、幼苗期の内生ジベレリン含量を有機溶媒抽出と生物検定法を併用して調査したところ、正常系統では炭素数20個のジベレリンの高い活性と共に、炭素数19個のジベレリンにおいても比較的高い活性が検出されたが、突然変異系統ではその両者共ほとんど活性が検出されず、この突然変異系統は内もジベレリン代謝に異常が存在する可能性が示された。重力反応における植物ホルモンの役割を研究する上で、有用である可能性が示唆された。
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