重力反応に異常をきたしたオオムギの突然変異serpentinaを用いて、地球外の微少重力環境下で禾穀類が正常に種子を生産できるかどうかのモデル実験を行った。突然変異植物は芽ばえにおいても、重力に反応した定位ができないため、芽生えは土壌中に種子のおかれた位置すなわち胚の位置に依存して芽ばえと地表面のなす角度が決定された。これと対称的に正常系統では、どのような位置に種子がおかれても重力に反応した定位反応により芽ばえは地表とほぼ垂直に伸長した。 層別刈り取り法を併用した生長解折法により、生産構造を検討すると相対生長率や純同化率には正常系統と突然変異系統のの間には大きな差異は見られなかったが、單位面積当り種子生産量は、後者は前者の約60%にすぎなかった。穂は正常系統では草冠の上部にのみ分布したが、突然変異系統では、その横重力屈性的伸長や傾斜重力屈性的伸長のため穂は地表から上部までほぼ全層に分布した。 正常系統と突然変異系統を節間伸長開始後に、上下逆転させると、両系統共に茎はほぼ垂直方向に伸長し、突然変異系統の種子稔性は正常系統と統計的に有意差が認められない所まで回復した。逆転しない突然変異系統では、種子稔性は地表と穂のなす角度と相関があり、垂直位置に近づくほど種子稔性が高かった。これらのことより、微少重力下では重力による定位ができないと仮定すると、オオムギは正常に種子を生産できない可能性が示唆された。 突然変異系統の内生ジベレリン含量を、正常系統と比較すると、前者ではジベレリン特にCー13位に水酸基の導入された活性型ジベレリンの含量が極めて低下していることがわかった。これらのジベレリン代謝の異常が、異常な重力反応を示すことと関係あるのかどうかについては、今後の研究にまちたい。
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