1.中国産超多収性ハイブリッドライス、汕優63号の光合成および関連酵素(Rubisco)の活性について検討した.汕優63号の光合成能力は、日本晴、コシヒカリ等のわが国の代表的品種に比較して特に高い値ではなかったが、生育後期段階においても比較的高い光合成能力を維持するのが特徴であった.CO_2固定過程のKey酵素であるRubiscoの活性には、生育中期では汕優63号と他の品種との間で差異が示されなかったが、汕優63号のRubisco活性は生育初期において特に高い値を示すこと、また、他の品種のRubisco活性が低下する生育後期段階でも高井活性を維持することが明らかとなった.汕優63号の光合成能力が生育後期段階においても高く維持されたのは、Rubisco活性維持に因るところが大きい推察された. 2.アフリカ導入系統のうち、多収型とみられるAF70とコシヒカリを交雑し、F1種子を一昨年度に得ている.両親系統とF1における光合成能力および関連要因について比較検討した.まず、物質生産パラメ-タをみると、F1は葉面積拡大能力、分蘖能力、草丈等について、両親または中間親よりも優れた値を示した.また、収量関連形質のうち、1株穎花数について両親を大幅に上回る値が示された.F1の個葉光合成能力は、AF70とほぼ同水準であり、コシヒカリよりも明らかに高い値を示した.AF70のRubisco活性は、生育初期から中期にかけて両親よりも高い値となり、Rubiscoの活性にヘテロシス効果が示された. 3.個葉の光合成速度決定因子を(1)気孔開度、(2)葉肉の光合成ポテンシャル、、(3)Rubisco活性の3つに分けて、解析する手法を確立した.酸素電極法による葉肉内光合成ポテンシャルの測定法を検討し、実用的に使用出来る段階に達した.また、個葉の表皮を剥離し、気孔抵抗を除外した状態での光合成速度(葉肉内光合成ポテンシャル)の測定法を開発した.これらの手法を応用すれば、上述した3要因の作用を一つの系として捉え、個葉光合成支配要因の解明が可能となる.
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