1.ハイブリッドの利用により超多収型水稲の育成が可能となり、中国においては広く実用化を進み、顕著な成果が挙げている。そこで、平成元年度には中国から最近の超多収ハイブリッド品種である汕優63号、64号等を導入し、その光合成、物質生産上の概要を調査把握した.また、当研究室では従前よりアフリカから導入した水稲について光合成、物質生産の解明を進めており、わが国の代表的名品種であるコシヒカリと交配し、F1系統を得て、次年度以降の研究材料とした。 2.平成2年度、3年度には、上記材料を基礎に、さらに物質生産的解析を進めるとともに、個葉の光合成速度や光合成関連の主酵素であるRuBPカルボキシラ-ゼ活性の解明や根系発育や機能におけるヘテロシス現象の解析を行い、いくつかの注目すべき成果を得た。以下にその概要を報告する。F1品種・系統の乾物生産・葉面積拡大能力に及ぼすヘテロシス効果は大きく、収量構成要素のうちで、穂数及び、一穂穎花数が特徴的に増加した結果はこのことに起因すると判断された。生育初期において、個葉光合成速度および葉肉内の光合成活性はF1品種・系統において高かった。生育後期においても光合成活性が高く維持されるF1品種が存在し、RuBPカルボキシラ-ゼ活性も高く維持され、この維持能力は収量形成の向上に有効な特性であると推察された。F1品種の栄養成長期間は長く、その間の同化産物が登熟期に有効に穂へ再転流する率が高いことが登熟過程の糖の動態から示唆された。またF1品種の中にも登熟過程の収量形成パタ-ンに違いがあることが明らかとなった。地下部競合実験から根系の発達、機能についてもF1品種が圧倒的に優れており、これは地下部への転流、分配率が高いことによるものと考えられた。水ストレスに対してもF1品種に優れた抵抗性がみられた。交配組合せを増やし、多くの育成F1系統について検討した結果、生長パラメ-タや、光合成活性においてヘテロシス効果が認められた。
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