研究概要 |
本研究は,野菜・花卉等の園芸作物の組織培養において,好適な培地組成および環境条件を栄養生理学的に検討しようとするものである。平成2年度は,主に一節ごとに切り分けたジャガイモ外植体を用いて,実験1では従来の培養法であるショ糖2%・弱光・無通気条件のMurashigeーSkoog(MS)処方を対照として,改良条件であるショ糖0%・強光・通気条件のMS,1/2MS園試処方(BN),2ENを比較した。また実験2では,改良条件でMS処方におけるNH_4とNO_3の比率を変えて窒素形態の比較を行った。なおいずれの実験も,ポリエステル綿を支持材とした液体培養法を用いた。 茎長は対照区に比べENでは約2倍と大きかった。またMSに比べENでは節間が長かった。外植体の生育は,従来法の対照区に比べると改良法のMSでは明らかに優れた。しかし改良条件下では,植物体の生育はMSあるいはBNなどの培地組成または濃度にはあまり影響されず,乾物重はどの処理区もほぼ同様であった。MSの場合,従来法と改良法では培地内の無機要素組成は同じであるにもかかわらず,改良法では生育が良くなると同時に,植物体中のN,K,Ca,Mg濃度が対照区より著しく高くなった。特にCaは濃度が80%も高くなるだけでなく,Nに対する比率も高くなるなど積極的に吸収されていることがわかった。このような背景には,改良条件下で通気がもたらす蒸散の効果を考えることができる。 改良条件下で,MS処方を基本としてNH_4とNO_3の好適比率を検討したところ,培養液中のNH_4の比率が高まるにつれて生育は良くなり,MS処方であるNH_4:NO_3=1:2で最大の乾物重となった。しかし,それ以上にNH_4の比率が高くなると逆に生育は抑制された。 以上のように,ジャガイモにおいてはMS処方の優秀性が認められたが,それより組成が単純で安価な園試処方でもMS処方に十分匹敵すると考えられた。
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