研究概要 |
過去2か年間にわたる本研究の結果より,前年度雄花を着生した結果母枝からは雄花,雌花を着生した母枝からは雌花が着生しやすい傾向が明確となった。また,雄花着生枝が雌花着生枝に比べ細くて短かいことから,雄花着生枝での抑制物質の存在と雌雄性発現との関係が示唆された。一方,雄花へのサイトカイニン処理によって雌性化が引き起こされたことから,雌雄性発現と内生サイトカイニン含量との係わりも推測された。本年度はこれらの結果を踏まえ,カキの雌雄性発現を制御する物質を検討した。 1.雌花着生枝からは雄花,雌花着生枝からは雌花が出現する規則性が強い‘岩瀬戸'を用い,花芽分化期の6月に雄花あるいは雌花を着生した新梢を採集し、新梢内のサイトカイニン様物質と抑制物質の活性を測定した。サイトカイニン様物質の測定は,メタノ-ル抽出液を精製した後,高速液体クロマトグラフ(HPLC)に導入し,各分画を集め,アマランサスの生物検定により測定した。抑制物質の測定は精製したメタノ-ル抽出液をHPLCに導入後,各分画をイネ幼苗テストで検定することで行った。その結果,サイトカイニンについては雄花・雌花着生枝ともにゼアチン様,2ーip様サイトカイニンが認められたが,その活性については着生した花性で顕著な差異はなかった。また,抑制物質についても2,3の強い活性を示す分画が得られたが,雌花着生枝の方が抑制活性が強く,予想とは逆の結果となった。 2.サイトカイニンが雌性化に効果があったことから,雄性化に及ぼすアンチサイトカイニンの影響を調査した。雄花の着生が稀である‘裂御所',‘甲州百目'を用いて,アンチサイトカイニンの処理を行ったが,雄性化への効果を認めることはできなかった。 3.以上の結果は,雌雄性発現に及ぼす生理活性物質の複雑な作用を示唆しており,さらなる検討の必要性を示唆した。
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