研究概要 |
1.カンキツ類45の胚発生能を有するカルスを維持する一方,6品種のカンキツ品種の種々器官及び組織から胚発生能を有しないカルスの誘導を行った.胚発生能を有するカルスとそうでないものとでは培地組成に対する反応が異なり,継代の途中褐変化し,継代培養によるカルスの維持が困難であった. 2.胚発生能を持つカルス細胞の電子顕微鏡像を撮影した.長期間継代したカルス細胞でも液胞の発達は不十分で細胞質の占める割合が高く,meristematicの状態であった. 3.昨年度確立したカルスからのタンパク質の抽出及び電気泳動による解析条件に従い胚発生したカルスとカルスのまま生長を続けるカルスを材料として実験を行った結果,胚発生能を有するカルスに特異的なバンドが3本存在した. 4.胚発生能を持つカルスとそうではないカルスからタンパク質を抽出し,二次元電気泳動により,解析を行った結果10数点胚発生能を持つカルスに特異的なスポットを確認することができた.すなわち74,400kDと49,600kDとの中間のタンパク,約49,600kDのタンパク及び24,800kD近辺のタンパクが顕著であった.特に,24800kD付近のタンパクは2つのカルス間で明確な差がみられ,胚発生の制御に大きな影響を及ぼしているようである. 5.胚発生過程でカルスからエチレン発生があることを明らかにし,胚発生能を有するカルスとそうでないカルスとの比較を行う上においてひとつの指標となることを明らかにした.
|