研究概要 |
1.カンキツ類多胚性45品種の胚発生能を有するカルスを維持する一方,カンキツの単胚種及びミカン亜科植物の受精胚を幼時期に培養し胚発生能をもつカルスの誘導に成功した.また,カンキツ品種の種々器官及び組織から胚発生能を有しないカルスの誘導を行った。胚発生能を有するカルスとそうでないものとでは培地組成に対する反応が異なり,胚発生能を有しないカルスでは継代培養による維持が困難であった. 2.胚発生能をもつカルス細胞からの胚発生について,組織学的観察を行った.その結果,元のカルス細胞が直接胚に分化するのではなく,胚分化培地に移植後新たに生じるカルスから胚が発生することが明らかになった.電子顕微鏡像では液胞の発達が不十分で細胞質が占める割合が高く,meristematicの状態であった. 3.胚発生能はプロトプラストを経由しても消失しないことをシキキツとウンシュウミカンで証明した.さらに胚発生能を持つカルスを細胞融合の一方に用いると融合細胞も胚発生することをCitrusとCitropsisの属間の細胞融合でも証明した. 4.胚発生能を有する培養細胞と胚発生能を失った培養細胞との間でのタンパク質の質的相違について,ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって調べた。胚発生能を有する培養細胞では,未変成ゲルー電気泳動によって2本,変成ゲルー電気泳動によって5本の特異的なバンドが存在した.さらに二次元電気泳動によって多くの特異的なスポットが確認された.胚発生能を有する培養細胞での胚発生過程において,特に分子量約50,000ダルトン及び約25,000ダルトンのスポットが新たに出現し,これらのポリペプチドが胚発生過程を制御している可能性が示唆された.
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