カイコの貯蔵タンパク質は血液中で多量体として存在し、とくに幼虫型雌特異タンパク質SPー1精製過程で、凝集体を形成する。生体内での状態を知る目的で、採血直後の血液を電気泳動で分析した結果でも凝集体が泳動パタ-ンにみられた。精製時に形成された凝集体はpH条件を6.3〜8.6の間で変化させても解離しないが、ph9.3では低量体への解離が観察された。グルタチオンを用いて6量体として精製したSPー1に対する過酸化水素の影響を調べたところ、処理により2〜5量体へと低量体化が生じた。凝集体を形成しないカイコの変異系統のSPー1においても同様の現象がみられ、現在のところSPー1の凝集体形成の機構、生体内での状態については解明されていない。 貯蔵タンパク質と同様に、カイコ血液中で最終齢に増加して主成分となり、変態に利用されると考えられるタンパク質(30Kタンパク質)について検討した。従来、SDSーPAGEで分析されていたが、NativeーPAGEを用いて遺伝的な変異系について調べた結果、MO系統に個体変異の存在がみられた。この変異を選抜、固定し、遺伝様式を調査し、共優性対立遺伝子によって支配それていることが明らかになった。これについて、すでに報告されている遺伝子と比較したところ、Lpーfとして報告された遺伝子によるものと同一と推定された。しかし、調査の過程でカイコの血液タンパク質には種々の個体変異が観察され、多くのものは遺伝的な変異によるものと推測され、タンパク質の構造解析に適した材料を提供すると考えられた。
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