家蚕血液の幼虫型雌特異タンパク質と類似のタンパク質がタバコスズメガにおいて検出されているが、その報告ではタンパク質は糖鎖を含まず、また同時にカイコの幼虫型雌特異タンパク質にも糖鎖はないと述べられている。一方、我々の得た結果では、電気泳動ゲルのPAS反応で陽性反応を示しており、この点に疑問がもたれたので調査した。糖鎖を含まないとの判断はconcanavalin Aと結合しないことを根拠としている。しかし、Con AーSepharoseのカラムに幼虫型雌特異タンパク質を通したところ、家蚕の幼虫型雌特異タンパク質はゲルに完全に吸着し、0.05MのMーαーDーMannosideによって溶出された。また、glucoseを標準物質として、フェノ-ル硫酸法によって還元糖を定量した結果、Bradford法で定量したタンパク質1mg当り6.25ー7.79μgの糖を検出した。また、電気泳動ゲルをSudan Black Bで染色した結果、2種の貯蔵タンパク質バンドは共に染色され、脂質を含むと推定された。次に、未知であった貯蔵タンパク質の等電点について、クロマトフォ-カシングより幼虫型雌特異タンパク質ではpH6.1、アリルフォリンではpH5.9、等電点電気泳動より雌特異タンパク質ではpH.6.7、アリルフォリンではpH5.8の値を得た。また、凝集をglutathionの添加によって抑制した幼虫型雌特異タンパク質に、H_2O_2を加えて酸化して電気泳動によって分析したところ、H_2O_2添加で雌特異タンパク質は低分子化した。これがサブユニットへの解離と低量体化であることは、H_2O_2添加試料のSDS並びに濃度匂配ゲル電気泳動によって、明らかとなった。これらの結果から、家蚕の貯蔵タンパク質は糖、脂質を含み、サブユニット構成も複雑である点で、貯蔵タンパク質と同様最終齢幼虫で著しく血液中に増加し、変態期の成虫発育に役立30Kタンパク質とは分子構造が大きく異なることが明らかとなった。
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