1.キアシドクガの核多角体をグリシン緩衝液に溶解して昆虫細胞系IPLB-SF-21AEの培養に加えたところ、約2週間後に細胞核に多角体の形成が認められた。電顕観察により細胞核内におけるヌクレオキャプシドの出現や多角体形成の初期段階である膜に繊維状物質が付着した像が認められた。 2.Pseudaletia unipuncta NPVに感染したアワヨトウ幼虫の脂肪体をアワヨトウの血球由来のSIE-MSH-805細胞系に加えたところ、ウイルスの増殖が認められた。5-6日後に100%近くの細胞の核内に多角体が形成され、電顕観察で桿状のウイルス粒子が確認された。 3.上記の2つの感染系を用いて、核多角体病ウイルスに対するGVH顆粒体由来の感染増進物質の作用を調べたところ、PuNPVとSIE-MSH-805の系において10-18倍の感染増進が認められた。培養細胞が感染増進物質に親和性を持っていることが、免疫血清を用いた間接蛍光抗体法によって明らかになった。 4.感染増進物質をテトラメチル尿素で処理することにより、一種類のリン脂質が分離され、高速液体クロマトグラフィ-による分析からホスファチジルコリンと同定された。上記の処理により、感染増進物質の生物活性が失われた。また共通抗原を持つ数個のポリペプタイドに分解した。これらのことから、ホスファチジルコリンは感染増進物質の生物活性やサブユニットの結合に重要な役割を果していると推定された。
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