研究概要 |
1.顆粒病ウイルスの包埋体に含まれる感染増進物質について,その作用機作について検討し,つぎの点を明らかにした。(1)Spodoptera frugiperda(ヤガ科の昆虫)の細胞株への核多角体病ウイルスの侵入は,ウイルスエンベロ-プと細胞膜との融合によって起るが,感染増進物質はこの融合を亢進することを明らかにした。 2.昆虫ポックスウイルスにも顆粒病ウイルスと同様に核多角体病ウイルスの感染を増進する物質が含まれている。その分子量は38,000で血清学的に顆粒体中の感染増進物質と関係がない。 3.アワヨトウ由来の細胞株にキアシドクガの核多角体病ウイルスから抽出したDNAをトランスフェクションにより取り込ませると,小型RNAウイルスが細胞内で増殖した。 4.アワヨトウ由来の細胞株から核多角体病ウイルスに対する感受性の異るクロ-ンを限界稀釈法により選抜した。この場合に新しい培地ではなく,一度細胞が増殖した古い培地を用いると,クロ-ンの増殖が良かった。 5.アワヨトウ幼虫の中腸皮膜組織の微絨毛を超音波処理により切り取り,分画遠心法により精製した。この精製試料は感染増進物質に対する親和性があることを血清学的方法により明らかにした。
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