土壌中のいわゆる非晶質遊離酸化鉄に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480059
• 研究機関: 愛媛大学
• 研究代表者: 吉永 長則 愛媛大学, 農学部, 教授 (20036289)
• 研究分担者: 松枝 直人 愛媛大学, 農学部, 助手 (90199753)
• キーワード: 非晶質遊離鉄 / フェリハイドライト / 示差X線回折 / メスバウア-分光 / 赤外線分光 / 選択溶解 / 火山灰土壌

研究概要

1.土壌中の分布:(1)多数の火山灰土壌について、化学処理(シュウ酸塩とDCB)と機器分析(赤外線分光、X線回折、メスバウア-分光)を組合せて調べた結果、火山灰土壌に含まれる非晶質遊離鉄はフェリハイドライトと考えていいものであることが分かった。ただし、その結晶度は一様ではない。非火山灰起源土壌にはこの鉱物は検出されなかった。このことは、これら土壌中ではこの鉱物は生成しないか、または生成しても検出限界以下の僅かであることを示す。火山灰土壌に多量に生成するのは、その風化初期に多量の鉄と同時にケイ酸が遊離するためであり、フェリハイドライトの生成はアロフェンのそれと関連があると推定される。
(2)フェリハイドライトは、年間気温の温和な熱帯山地の火山灰土壌にも生成していることが推察された。
(3)II価鉄を多量に含む地下水は、湧出後空気の暴露によって酸化し、ただちに鉄水酸化物を沈殿する。これは結晶度の極めて低いフェリハイドライトであり、同様の鉄水酸化物は2,3の水田下層土に見出された。
(4)フェロキシハイトは同定が困難であり、土壌中に存在するか否かは不明であった。
2.合成実験:フェリハイドライトの生成には共存するケイ素の濃度とpHに適正範囲があり、この範囲から外れると、その結晶度は悪くなるか、または他の結晶鉱物(ゲ-タイト、レピドクロサイト)が生じることが分かった。その結果は、上の少なくとも火山灰土壌中での多量の生成と符合する。
3.結晶学的性質:ケイ素存在下とゲルマニウム存在下で合成したフェリハイドライトのX線回折線の面間隔値は同一であり、加熱によって共にヘマタイトへ転化することから、これらの陽イオンは、この鉱物の結晶格子中には存在せず、粒子またはドメイン外部に“付着"していると推察された。

研究成果

• [文献書誌] Childs,C.W.: "Ferrihydrite deposit in paddy races,Asoーdani" Clay Science. 8. 9-15 (1990)
• [文献書誌] Childs,C.W.: "Ferrihydrite in volcanic ash soils of Japan" Soil Science Plant Nutrition. 37. 299-311 (1991)
• [文献書誌] Virakornphanich,V.: "Clay mineralogy of Reddish Brown Lateritic soil from Thailand" Soil Science and Plant Nutrition. 37. 175-178 (1991)
• [文献書誌] Matsue,N.: "Imogolite and allophane in shattered sandstone underlying a Brown Forest soil" Soil Science and Plant Nutrition. 37. 171-173 (1991)
• [文献書誌] 松枝 直人: "粘土鉱物構造中の電荷分布ー分子軌道法による計算例" 粘土科学. 30. 240-243 (1991)
• [文献書誌] 中井 信: "非火山灰土壌の非晶質成分" 日本土壌肥科学雑誌. 62. 226-236 (1991)
• [文献書誌] Supriyo,H.: "Chemistry and mineralogy of some soils from Indonesia" Soil Science and Plant Nutrition. 38. (1992)
• [文献書誌] Supriyo,H.: "Chemistry and mineralogy of volcanic ash soils from Java" Soil Science and Plant NUtrition. 38. (1992)
• [文献書誌] 中井 信: "非火山灰土壌非晶質粘土成分の表面活性評価" 日本土壌肥料学雑誌.
• [文献書誌] 吉永 長則: "フェリハイドライトの生成条件についての一考察" 日本土壌肥料学会講演要旨集(平成4年4月講演発表). 38. 24 (1992)
• [文献書誌] Yoshinaga,N.: "Si in ferrihydrite:is in the structutre or adsorbed?" 国際粘土会議(1993Australia).
• [文献書誌] Yoshinaga,N.: "Synthesis of ferrihydrite,in relation to its genesis" Soil Science and Plant Nutrition.