食材性キクイムシの生活とその共生菌

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480071
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 金光 桂二 名古屋大学, 農学部, 教授 (10012064)
• 研究分担者: 中島 敏夫 北海道大学, 名誉教授 (60001377) ; 肘井 直樹 名古屋大学, 農学部, 助手 (80202274)
• キーワード: 養菌性キクイムシ / 共生菌 / mycangia / Ambrosiella属 / Paecilomyces sp. / SEM / 酵母類

研究概要

最終年度である本年度は、過去2年間の研究成果をふまえ、3属4種の養菌性キクイムシの生活史およびその生育に伴う菌相の遷移についてのとりまとめを行った。
キクイムシ坑道内の菌相は、キクイムシの生育段階によって遷移し、その遷移様式には4種に共通した一定の傾向が認められた。すなわち、成虫の穿入期から幼虫期にかけては、4種ともAmbrosiella属の菌が優占的であったが、生育段階が進むにつれて徐々にその他の菌類と置き替わり、新成虫期にはAmbrosiella属の菌はほとんど分離されないことが示された。また、Ambrosiella属の菌種は、キクイムシの種ごとに異なっていたが、同一種のキクイムシの坑道からは、穿入樹種およびキクイムシの世代にかかわらず、同じ種のAmbrosiellaが分離されることが初めて明らかにされた。また、酵母類はいずれの生育段階でもかなり普遍的に存在し、占有率と遷移様式はキクイムシの種により多少異なるものの、産卵期から飛翔期までほぼすべての生育段階で分離された。
さらに、Ambrosiella属と酵母類以外の菌類では、ミカドキクイムシ、クスノオオキクイムシとハネミジカキクイムシの場合、Paecilomyces sp.が優占種となった。
SEMによる実際の坑道内の観察結果によれば、キクイムシの生育段階に伴う菌相の変化は、分生胞子の形態や坑道内の繁殖状態などから判断して、分離試験の結果をほぼ裏付けるものであった。
mycangia(胞子貯蔵器官)内の菌相も、坑道内の場合と同様、キクイムシの生育段階によって異なっていたが、その遷移様式はキクイムシの種によっても異なっていた分離試験、SEM観察の結果から判断して、主共生菌のキクイムシ体内への取り込みは、いずれの種も羽化直後に行われることが明らかにされた。

研究成果

• [文献書誌] Kinuura,H.: "Life history and reproduction of the ambrosia beetle,Scolytoーplatypus mikado BLANDFORD(Coleoptera:Scolytidae)." Japanese Journal of Entomology. 59. 763-773 (1991)
• [文献書誌] Kinuura,H.: "Symbiotic fungi associated with the ambrosia beetle,Scolytoーplatypus mikado BLANDFORD(Coleoptera:Scolytidae)ーsuccession of the flora and fungal phasesin the gallery system and the mycangium in relation to the developmental stages of the beetleー." Journal of the Japanese Forestry Society. 73. 197-205 (1991)
• [文献書誌] 梶村 恒: "クスノオオキクイムシ(Xyleborus mutilatus)の共生菌(IV) ー胞子貯蔵器官(mycangia)の微細構造と共生菌の放出方法ー." 102回日本林学会大会論文集. 102. 255-256 (1991)
• [文献書誌] 梶村 恒: "クスノオオキクイムシ(Xyleborus mutilatus)の共生菌(V) ー電気泳動法によるアンブロシア菌の蛋白質分析ー." 102回日本林学会大会論文集. 102. 257-259 (1991)
• [文献書誌] Kajimura,H.: "Fungal symbionts of the ambrosia beetle,Xylosandrus mutilatus(BLANDFORD)(Coleoptera:Scolytidae):dynamics of the fungal flora in the gallery system and the mycangia in relation to the life history of the beetle." Ecological Research.