ヒト血小板は凝集・放出反応により血液凝固を誘発するという重要な機能を持つが、その反応は血小板自身がアラキドン酸(AA)より合成するプロスタグランジンエンドペルオキシド(PGG_2、H_2)、トロンボキサン(TXA_2)によって引き起こされることが明らかにされている。一方、魚類はヒトの血小板に相当する栓球を有し、この細胞が血液凝固において重要な役割を果していると考えられているが、栓球凝集に関与するPGについてはいまだ不明な点が多い。そこで本年度は、魚類の栓球凝集に関与するPGを検索することを目的として検討した。ヒト血小板浮遊液、コイおよびニジマス洗浄栓球浮遊液にインドメサシンを添加した後、TXA_2あるいはPGG_2、PGH_2を加えて凝集能を測定した。その結果、ヒト血小板はTXA_2、PGG_2、PGH_2のいずれに対しても凝集能を示したのに対し、コイおよびニジマスの栓球においては顕著な凝集反応は観察されなかった。これらの結果より魚類栓球は、魚類栓球自身が合成・分泌するPG類に対してのみ反応するものと仮定し、コイの栓球浮遊液にコラ-ゲンを添加して凝集反応を起こさせた後、経時的に別の浮遊液に添加したところ、反応後5分以内の浮遊液に凝集活性を認めた。そこでこの浮遊液よりエ-テル抽出し、ケイ酸カラムクロマトグラフィ-によって分画したところ、石油エ-テルーエ-テル(7:3、v/v)の画分に凝集活性が認められた。この活性画分をTLCによって分離し、TLC的に単一な凝集活性物質を得た。次年度においては、多量の栓球浮遊液を用い、栓球凝集活性物質を分離精製し、GCーMSを用いてその化学構造を決定する。また、魚類の鰓および心臓で合成されたPG関連物質を分離・精製し、GCーMSを用いて構造決定を行うよう計画している。
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