研究概要 |
魚類はヒトの血小板に相当する栓球を有し,この細胞が血液凝固において重要な役割を果たしていると考えられている。本年度においては,昨年度で報告した栓球凝集活性物質の分離・精製を試みたが,本活性物質は極めて不安定であり,TLCによる分離までは活性を保持していたが,その後の精製操作の後では栓球凝集活性を失ってしまい,活性物質の構造決定には至らなかった。ついで,栓球以外の細胞あるいは組織において合成されるプロスタグランジン関連物質,特にリポキシゲナ-ゼ代謝産物を検索することを目的とし,マダイの鰓で合成されるリポキシゲナ-ゼ代謝産物の分離・同定を試みた。まず,[1ー ^<14>C]アラキドン酸を基質として用い,マダイの鰓組織におけるリポキシゲナ-ゼ活性の分布を検討した結果,リポキシゲナ-ゼ活性は主にミクロソ-ム両分に存在することを認めた。ついで,マダイ鰓のミクロソ-ム両分よりリポキシゲナ-ゼ代謝産物をエ-テル抽出し,ケイ酸カラムクロマトグラフィ-によってモノヒドロキシ酸両分を分離した。さらに逆相HPLCおよび順相HPLCによって3種のモノヒドロキシ酸を単離した後,GCーMSによってそれらの化学構造を検討した結果,アラキドン酸,エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸由来の12ーヒドロキシエイコサテトラエン酸,12ーヒドロキシエイコサペンタエン酸および14ーヒドロキシドコサヘキサエン酸と同定した。また,コイの鰓組織ホモジネ-トの上清より,上述と同様の方法で3種のモノヒドロキシ酸を単離した後,それらの化学構造を検討した結果,リノ-ル酸,アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸由来の13ーヒドロキシオクタデカジエン酸,12ーヒドロキシエイコサテトラエン酸,12ーヒドロキシエイコサペンタエン酸と同定した。
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