(1)裸地斜面に降雨があると、一般に水の一部は斜面中に浸透し、他は斜面を流下する。この間に地表面は雨滴による打撃を受け続け、このことが地表クラスト(皮膜)の形成を促す。そこで降雨による地表クラストの形成と、それが斜面の浸食に対して及ぼす影響を室内人工降雨装置を用いて詳細に調べた。その結果、地表クラストは、土壌浸食を増加させるような働きと、それを減少させるような働きとを兼ね備えておりそのどちらの働きが卓越するかは傾斜角度が約10°以上であるか、または約3°以下であるかによって決まることを確かめた。 (2)斜面内部に透水性の高い層や低い層が挟まれている不均一構造斜面では、浸透水の集中や散逸などが生じて斜面の安定性に影響すると予測した。このことを実証するために、成層土中の流線を可視化する実験方法を考案した。まず初めは、重力の影響を排除するために平面モデル土層を作成し、標準砂を充填した後、土層中央部に標準砂より透水性の高いガラスビ-ズ層、またはそれより透水性の低いガラスビ-ズ層を幅3cmで挿入し、水平方向の定常浸透流を生ぜしめた。この時の流線を可視化するために、墨汁、アルミニュウム粉末、コ-ヒ-ミルク、フルオレセイン、過マンガン酸カリウム、メチルオレンジ等のトレ-サ-を流した。その結果、メチルオレンジ粉末が最も観察に適していることを確認し、これを撮影した。そして、流線が標準砂とガラスビ-ズの境界面で屈折することを確認し、これを浸透流の保存則から導かれる流線の屈折理論を用いて解析した。成層土中の浸透流の流線を、特に飽和の場合と不飽和の場合を共に可視化した例は非常に少ない。続いて、重力の影響を受ける垂直モデル土層を作成し、平面モデル土層に準拠した定常浸透流実験装置を完成させた。この装置は、上から所定のフラックスを与えられることと、地下水コントロ-ルが可能である点に特色がある。
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