本研究は、土壌圏内の不均一構造、すなわち地表のクラストやクラック、耕作による作土層と耕盤層の形成、動・植物の生命活動に由来するマクロボア、機械作業による土壌の反転や切土・盛土などが土壌侵食や土砂崩壊とどのように関連するかを実証的に解明し、斜面の安定性を増進する方策を探求する目的で行った。本研究の成果は、下記の3つに大別される。 1.成層土中の屈折流の解明:従来土壌中の地下水流や飽和浸透流は異なる透水性を有する土層の境界面を通過するときに屈折することが知られていたが、不飽和浸透流の場合についてはほとんど知られていなかった。本研究により、これを実験的および理論的に解明した。 2.不均一土中の選択流の実証的および理論的現象解明:不均一土中の選択流の分類を行なった。また、従来未解明であった成層斜面中のFunneled Flow(集積流)とFingeringの関係を、8mmビデオ撮影、半導体圧力センサ-、色素トレ-サ-等を用いて克用に観察し、水平土層境界面で不規則的に発生することが知られているFingering現象と全く異なり、傾斜境界面に沿ったFunneled flowとその集積の結果として現れるFingering現象は、規則的に反復して発生することを確認し、この現象のモデル化を誠みた。 3.不均一な斜面中の浸透流の特質と斜面の安定性の解明:上記1、2の成果に加え、実際の降雨下で発生する土壌表面のクラスト構造とその機能を実験と解析により検討した。また、成層斜面中の浸潤現象や集積流の水理学的特性に付いて検討した。なお、集積流とクラスト構造の研究は本研究だけでは完了し得ず、今後に残された課題となった。
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