研究概要 |
初年度の研究より,植物生体は動物生体と異なって音響インピダンスが(a)著しく小さい,(b)品種によって大きく異なる,(c)品質の変化により大きく影響されることを指摘した。これらは,超音波振動子の設計において重要な特性である。したがって,システム設計のための物性計測(音響インピダンス)および画像解析による植物生体情報処理の可能性を明らかにする目的で,次のような項目について検討した。 1.小型試験片による植物組織の異方性・不均一性の計測:植物体内部の画像情報を得るためには微小組織間の異方性や不均一性を音響インピダンスの相違によって表すことが必要である。ここでは,主に果菜類の軸方向とそれと直角方向の小型試験片を8種類の植物を対象に作成し,音響インピダンス計測を行い,超音波物性の違いから組織の変化を追跡することができることを明らかにした。 2.画像解析による植物胚軸組織の内部断面図の作成:一般に,非破壊検査によって得られる画像情報は,コントラストが著しく悪い。したがって,これを画像処理の技術で改善する方法を確立するため,幼植物胚軸のX線画像を基本にして接木の活着における内部断面の画像解析による判別を試みた。ここで使われた画像処理プログラムの主なものは,画像積算,ヒストグラムの平坦化,画像強調,画像合成などであるが,形成層内部の癒着による活着状態を判別するのに必要な程度の分解能をもつ内部断面画像が得られた。 3.超音波照射による幼植物の生育生理に及ぼす影響:超音波照射による生体への影響は一般に少ないとされている。ここでは,幼植物体の成育過程における生理作用への影響の程度を明らかにする目的で,カイワレダイコンについて調べた。その結果,倭化現象,硬さ,苦味の増大が認められた。
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