研究概要 |
家畜のエネルギ-代謝測定は,栄養要求量算定の基礎として重要であるが,仔畜の育成や繁殖生産の過程で放牧が含まれているときはそのときの代謝量推定が著しく困難となる。欧米の家畜飼養標準作成にも,この代謝量については単に仮定の係数をかけて推定している現状にある。この研究では,子牛の放牧時におけるエネルギ-摂取量,エネルギ-消費量,および牧草供給量と子牛の成長速度のそれぞれを経時的,季節別に測定し,それらの間の関数関係を気象条件と関連させつつ決定した。それによって,放牧時の飼料である植物の供給量が時々刻々と変わる条件のもとでの家畜のエネルギ-代謝推定を可能とすること,およびそのエネルギ-代謝各過程のエネルギ-変換効率に及ぼす草地植生型の影響を明らかにすることをねらいとした。その結果は次のように要約される。 1)放牧時のエネルギ-代謝の測定法を,野外調査法として確立した。とくに,約3週間にわたりエネルギ-消費速度を分単位で測定記録しうる方法を開発した。 2)牧草供給量の高低は家畜のエネルギ-摂取量に影響するが,放牧容度の多様な水準に応じて供給量〜摂取量関係を関数関係として測定し,数式化(モデル化)することができた。 3)ライグラス型の草地とト-ルフェスク型草地における植物生産と子牛の成長を太陽エネルギ-の流通過程として定量的,経時的に測定し,各効率が草種間で違いがあり,とくに夏季に著しいことを示した。その季節変動,とくに夏季の効率低下は,代謝エネルギ-から家畜増体への畜積の効率の差に起因し,さらにその差は維持・活動エネルギ-消費が夏季に大きくなること,その消費増がライグラス型では軽くト-ルフェスク型で大きいことを明らかにした。
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