研究概要 |
研究者らは1985年以来,暑熱環境における雄琢のサマ-ステリリティについて検討を行ない,30〜35℃の環境温度において3〜6週間飼養すると明らかに造精機能が低下することを認めた.現在は,その造精機能の低下防止について検討を行ない,既に高栄養飼養による試験は行なっている.昨年からは当補助金を受け,局所冷却による造精機能の低下防止法について検討を行なっている.初年度は,自然環境下において局所冷却(琢の首〜肩部に水滴を落下させるdrip cooling法)を行ない,その効果をサ-モグラフィ-を用いて生理反応の面から検討した.本年度は環境調節室を用い,適温期(24℃一定)を3日間,加温期(33℃,10h;28℃,14h)を4週間とし,大ヨ-クシャ-種雄琢6頭を用いて,同様の調査を行なった. 実験1では,水滴の落下位置を検討するために,33℃の室温において,頭部,頸部,精巣部に水滴を11分ごとに1分間,滴下させて,それが全身の皮膚温に及ぼす影響を調査した.その結果,頸部に水滴を落下させた場合に全身の皮膚温を低下させる効果が認められた. 実験2では,実験1の結果を基に,頸部に水滴を落下させた場合における適温期および加温期(33℃時)の心拍,呼吸,直腸温,サ-モグラフィ-による皮膚温および精液性状を調査した.その結果,心拍数および呼吸数に対しては大きな影響を与えなかったが,直腸温および皮膚表面温については約1℃上昇を抑える効果が認められた.精液性状については暑熱のためか,乗駕欲を欠くことが多く,十分な調査が行なえなかった. 以上のことから,drip coolingによる局所冷却法は,雄琢のサマ-ステリリティ-の防止に十分,活用できる方法であることが示唆された.
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