1.自然感染例について 伝染性気管支炎(IB)の腎炎型の自然発生は、肉用鶏の3週齢以降に生じ、成鶏では認められなかった。発病鶏は、臨床的には特記すべき症状を示さず、死亡率が上昇して気づかれた。死亡率は鶏群によって異なるが、高い例で約10%に達した。肉眼的には腎の混濁腫脹が特徴的であった。また、ほとんどの罹患鶏のファブリキウス嚢が萎縮していたが、この原因としてはIBウイルスと伝染性ファブリキウス嚢病ウイルスの双方が考えられ、決定し得なかった。よって今後は、ファブリキウス嚢の萎縮とIBウイルスとの関連性を明らかにする必要がある。腎の組織変化は、急性期の尿細管腎症と慢性期の尿細管・間質性腎炎に大別された。これらのうち、野外例の致死例のほとんどは前者の病変を示し、後者の病変例は少なかった。電顕的には、変性過程中にある尿細管上皮細胞の細胞質と細胞の自由面に、コロナウイルスを認めた。 2.実験感染例について 野外で自然発生したIB鶏の腎組織を乳剤にして得た上清を凍結保存し、これをSPF雛に点眼あるいは気管内に接種した。この結果、接種後1週目から自然例におけると同様の腎病変(急性期の尿細管腎症)が作出された。一方、接種後耐過した3週齢以降の雛は、尿細管・間質性腎炎を示した。この病変はリンパ球と形質細胞の集蔟からなり、局所免疫反応と解された。 以上の成績から、IBの腎炎型はIBウィルスの特有な株によって生じることが明らかにされた。また、野外では、IBウィルスの不顕性感染があり、これによる慢性の腎炎(尿細管・間質性腎炎)がかなりあるものと推測される。
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