研究概要 |
1.自然感染例について 伝染性気管支炎(IB)の腎炎型の自然発生は,3週齢以降の肉用鶏では認められるが,成鶏では認められないことを昨年度の研究実績として報告した。ところが,1991年3月,北海道の産卵養鶏場の成鶏に本病が多発した.その発生状況は以下の通りであった. 発病鶏はシェ-バ-で,同一日齢の鶏約1万羽が3鶏舎に分けられて飼育されていた。130日齢の時,3鶏舎の一つに溶呼吸器症状が強く現れた.この鶏舎ではこれより1週間後に死亡率が上昇した.同一の症状と死亡率の上昇は第2,第3の鶏舎へと20日の間に生じた.我々は151日齢になった時,これら3つの鶏舎からの死亡鶏20羽を病理学的に検索した。 その結果,全例が腎の混濁腫眼,心外膜の中等度の痛風病変,数例に肝被膜に極く軽度の痛風病変を認めた.さらに,卵巣並びに卵管は未発達であった.また,約1/3例において,気管に灰日色粘稠な粘液の軽度ないし重度の増量を認めた.組織学的には,腎に急性ないし亜急性のIB腎炎型病変と,気管に急性のIB病変を認めた。ウイルス分離は目下実施中である. このように,従来成鶏は本病にほとんど罹患しないとされながらも認められたことは,恐らくウイルスの株に起因するもの考えられ,本病の多態性が伺われる.よって現在ウイルス学的検討を実施中である. 2.実験感染例について 昨年度の研究でIB腎炎型を確実に再現できるようになったので,本年度は長期の実験を行って病変の推移を免疫学的な観点から検討した.その結果,感染当初は死亡が目立つが,回復する例も多い.しかし,回復例は腎にリンパ球浸潤を主体とする病変を有し,感染の持続を示唆した.
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