研究概要 |
鶏の伝染性気管支炎ウイルス(IBV)に起因する腎症・腎炎の病理発生を明らかにする目的で,SPF初生雛に同ウイルスを接種し,腎病変を経時的かつ超微形態学的に検索した。 その結果,初期病変は細胞の腫脹で,これにはミトコンドリアの腫大,リボゾ-ムの増数,粗面小胞体ならびにゴルジ装置の発達が伴れていた。この初期変化は,接種後2日目から認められた。接種後4日目からはIBV粒子が認められ,この時細胞貭内小空胞が多く伴れていた。ウイルス粒子は細胞貭基貭,空胞内,自由表面に見られ,細胞によっては空胞内に向かって盛んに出芽している像が認められた。ウイルス接種後8日目頃からは,多数のウイルス粒子を伴って細胞が破壊する像が認められた。一方,ウイルス粒子の複製は盛んに行われるが細胞は破壊されない像も多く認められた。 以上のように,IBVによる腎症は,ウイルスの直接侵襲による細胞破壊を基本とすることが明らかにされた。そしてウイルスの複製では,空胞内への出芽像が頻繁に認められた。一方,細胞死を招来しないウイルス複製も多く,これは持続感染を示唆した。これらの所見は,IBVを接種した雛が,接種後早期(約10日まで)には死亡率があるが,以後はそれが低いという事実を反映していた。 上記の病理発生の実験には2株(既報の松田ー2株と我々の分離株であるHB976株)を用いた。両者の病原性には差があり,HB976株が松田ー2株より病原性が強かった。しかし,ウイルスの複製を含めた尿細管上皮の超微形態学的変化には差はなかった。
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