本研究では、血管内皮細胞由来の血管収縮因子であるエンドセリンー1(ETー1)およびエンドセリンー3(ETー3)を用いて、各種平滑筋に対する作用を検討し、以下の知見を得た。 1.ラット大動脈(RA)、頚動脈(RC)、子宮(RU)、モルモット盲腸紐(GT)、回腸(GI)、輪精管(GV)、ブタおよびイヌ気管(ST、CT)を材料とし、Ca感受性色素furaー2を使用して、細胞内Ca濃度([Ca]_1)と収縮張力を同時に測定した。その結果、RA、RC、ST、CTはGI、GVに比べて、ETー1に対する感受性が高いことが示唆された。受容体結合実験の成績を加えると、RAにおいてETー3の受容体数がETー1よりも少ないこと、RUにおいてETー3の受容体数はETー1よりも少なく、またその内活性も低いこと、GlにおいてはETー3の受容体数はETー1と同程度だが、その内活性が低いことが示唆された。 2.発情休止期、発情期、妊娠期のRUを用いた実験より、発情休止期、発情期のRUにおいてETー1は電位依存性Caチャネルを介したCa流入を起こすが、妊娠期においてはこれ以外の経路からCa流入が起こることが示唆された。 3.RAにおいて、ETー1による[Ca]_1 の増加はCaチャネルブロッカ-により完全に抑制されたが、張力は一部しか抑制されなかった。さらに外液のCaを除去しても、張力が一部残存することから、ETー1による収縮はCaに依存する部分、収縮蛋白系のCa感受性増加による部分およびCaに非依存性の部分のあることが示唆された。 4.Ca除去液中においてETー1により、[Ca]_1が一過性に増加した。また、[^3H]ーlP_3を用いた実験よりRAにおいてETー1投与によりlP_3量が増加したことから、ETー1はP1代謝回転を介した反応を起こすことが示唆された。 5.α毒素処理スキンドファイバ-を用いた実験により、ETー1による収縮はG蛋白を介したものであることが示唆された。 以上の成績により、ETー1およびETー3受容体は平滑筋の種類により、その分布や受容体結合後の活性が異なると考えられる。また、そのETー1は流入したCaに依存する収縮以外に、受容体刺激により、G蛋白質、フォスフォリバ-ゼC、ジアシルグリセロ-ルを介しCキナ-ゼを活性化し、Ca感受性の増加とCa非依存性の収縮を起こすと考えられる。
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