レ-ザ-顕微鏡は1970年代初めに試作され、その後、Sheppardらにより理論的体系が築かれ、実用に耐えうる物が世に出始め、主として、半導体素子の観察とその品質検査の分野に使用されていた。我々は、レ-ザ-顕微鏡の特性、即ち(1)共焦点型光学系でレ-ザ-光で単一点光源を利用するので、理論的に一般の光顕より分解能が向上する。(2)不要散乱光が少いので、フレア-のない鮮明な像が得られる。(3)焦点深度が光顕より深いので、より立体的な像が観察できる。(4)熱線を含まないので生きた材料を長時間観察できるなどから、これを生物試料、特に無固定無染色の試料に応用できるのではないかと考えた。そこで、まず、分裂細胞染色体、ヒト体細胞染色体、ヒト精子の形態学的観察に応用し、好結果が得られたので、これを国際学会にて発表し、外国雑誌(Cytobios等)にも発表してきた。最近になり、染色体や精子のみでなく、赤血球の形態などが明瞭にとらえられることが分り、泌尿器科学的疾患でしばしば遭遇する血尿の鑑別に応用できることが分かった。即ち、次の通りである。膀胱腸瘍等の尿路疾患よりの血尿中の赤血球の形態はisomorphic(同形赤血球)であり、腎炎等の糸球体疾患よりの赤血球の形態はdysmorphic(変形赤血球)が一般的であるとされている。この赤血球の鑑別は従来、位相差顕微鏡でなされていたが、熟練を要し、かなり主観的な鑑別がなされていた。レ-ザ-顕微鏡により赤血球の形態は容易に鑑別でき、その血尿が、糸球体由来のものであるか、尿路由来のものであるかが客観的に観察でき、診断の有力な手がかりの1つとなり得ることが分った。この結果は泌尿器科学会に発表し、現在、論文をNephronに投稿中である。
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