細胞間情報伝達物質の遺伝子発現機構の細胞化学

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480110
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 佐野 豊 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (00079683)
• 研究分担者: 上田 秀一 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (60150570) ; 山田 久夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (00142373) ; 河田 光博 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (60112512)
• キーワード: 情報伝達物質 / 免疫組織化学法 / in situハイブリダイゼ-ション法 / 遺伝子発現 / ペプチド / アミン / 半定量的画像解析 / 脳移植

研究概要

細胞間情報伝達物質である各種ペプチド(オキシトシン、バソプレシン、P物質、エンケファリン、CGRP、ニュ-ロペプチドY、ANP、BNP)およびアミン類(インド-ルアミン、カテコ-ルアミン)の、外的・内的環境変化に対する形態学的変動について、免疫組織化学法とin situハイブリダイゼ-ション法を用いて検索を進めた。まず、それぞれの情報伝達物質の分布を脳と脊髄(脊髄神経節を含む)において免疫組織化学的手法を用いて正確にマッピングした。とくに、ブタ脳から抽出された新しいペプチドであるBNPについて、ブタ脊髄の各レベルにおける分布差を、本年度購入した画像解析装置を使用して解析した。その結果、頚髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄において顕著な分布差を認め、BNPの生理的意義を考察する上で重要な知見となった。次に、実験動物(おもにラット)を高張性食塩水負荷や絶水環境におき、水分代謝変動に伴う後葉ホルモンのmRNAの変化を観察した。浸透圧変化によって、視床下部・室傍核、視索上核のバソプレシンおよびオキシトシンmRNAは著しい増加を示した。しかし、免疫組織化学的には、オキシトシン、バソプレシン免疫陽性反応は、ともに減少傾向を呈した。このことから、浸透圧刺激によって、これらの物質の産生能は上昇したが、放出が産生を上まわったことが形態学的にとらえられた。さらに、脳移植実験を行い、縫線核セロトニンニュ-ロンの発現状態を細胞体および終末部において観察した。これらのセロトニン線維は、標的部位に応じた特異的分布パタ-ンを示して再構築された。細胞体内でのアミン合成発現については、縫線核組織を眼球前眼房内に移植した実験で解析した。縫線核ニュ-ロンにおけるチロシン水酸化酵素は、移植後3日目で発現していたが、セロトニンは、同時期においてモノアミン酸化抑制剤投与によってのみ発現していた。次年度は、これらについて半定量的解析を加える予定である。

研究成果

• [文献書誌] Sumner,B.E.H.: "Does acute,intense stimulation of oxytocin neurones in the supraoptic nucleus increase their content of oxytocin mRNA?" Brain Res.489. 283-290 (1989)
• [文献書誌] Kawata,M.: "Brain natriuretic peptide in the porcine spinal cord:An immunohistochemical investigation of its localization and the comparison with atrial natriuretic peptide,substance P,calcitonin gene-related peptide and enkephalin." Neuroscience. 33. 401-410 (1989)
• [文献書誌] McCabe,J.T.: "Quantitative in situ hybridization to measure singlecell changes in vasopressin and oxytocin mRNA levels after osmotic stimulation." Cell.Mol.Neurobiol.
• [文献書誌] Ueda,S.: "Rearrangement of serotonin-immunoreactive fibers in the denervated rat suprachiasmatic nucleus after transplantation of fetal raphe tissue." Cell Tissue Res.
• [文献書誌] Kawata,M.: "Localization and regulation of mRNAs in the nervous tissue as revealed by in situ hybridization." Comp.Biochem.Physiol.
• [文献書誌] Kawata,M.: "In situ hybridization histochemistry with oligonucleotide probe as a tool for the detection of neuropeptide mRNAs." Acta histochem.cytochem.
• [文献書誌] Sano,Y.: "Neurons and Paraneurons,Structure,Function and Physiology(Morphological aspects of neurons as secretory cells.)" Jap.Soc.Histol.Document,Niigata(Ed.Fujita,T.,Yanaihara,N.,and Kanno,T.), 107-112 (1989)