研究概要 |
本年度は主に大脳皮質のGABAニュ-ロンについて、免疫細胞化学的解析を行なった。 1)単クロ-ン抗体HNKー1が、GABAニュ-ロンのサブポピュレ-ションの1つであるカルシウム結合蛋白パ-ブアルブミン含有神経細胞の一部を特異的に認識していることの証明。 HNKー1は、ヒトT cell系培養細胞の膜抗原に対してつくられた単クロ-ン抗体であり、グルクロン酸と硫酸基を含有した糖鎖が抗原基であるとされている。更に、重要なことはこのHNKー1抗原基が形態形成上重要な分子である細胞接着因子(NCAM,MAG等)にかなり特異的に発現していることである。一方、HNKー1は、成体ラット、マウスで中枢神経系にかなり限られたニュ-ロン群の細胞膜近傍を認識することが報告されている。特に、大脳皮質では主に、いわゆるGABA性非錐体細胞の一部を認識するとされている。我々は、従来の大脳皮質GABA系の免疫細胞化学的解析により、GABAニュ-ロンを(1)カルシウム結合蛋白パ-ブアルブミンを含有したGABAニュ-ロン、(2)他の神経活性物質を含有したGABAニュ-ロン、(3)その他の三つのサブポピュレ-ションに分類した。これは、いわばGABAニュ-ロンの細胞質に含有される物質による化学的分類である。では、細胞表面を認識するHNKー1はこのような分類とはどのように関係しているのであろうか。我々がラット大脳皮質1次体性感覚野で検討したところ、HNKー1は、上記のGABAニュ-ロンのサブポピュレ-ションであるパ-ブアルブミン含有GABAニュ-ロンに特異的であることが判明した。このことはパ-ブアルブミン含有GABAニュ-ロンの一部は、細胞表面近傍に特異な微小環境を有していることを示している。 2)ステレオロジ-による定量的解析 プラスチック包埋した大脳皮質から連続した0.5μmの準超薄切片を作成し切片間距離として3μmを選びdisectorによる解析を行ない、GABAニュ-ロンがニュ-ロンの20%を占め、その約半数(10%)がパ-ブアルブミン含有GABAニュ-ロンであることを明らかにした。
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