膵外分泌腺細胞の分泌機能は細胞内カルシウムイオン(Ca)濃度の増減により制御されている。イノシト-ル三リン酸(IP3)は受容体刺激後の細胞内メッセンジャ-として、細胞内Caの動員調節にあずかっている。一方、膵外分泌腺細胞分泌刺激に伴うアラキドン酸の遊離は、既に報告のある事実であるが、その生理機能は不明であった。本研究課題の一環として、アラキドン酸のシグナル伝達機構に果たす役割を膵外分泌腺細胞において解明した。アラキドン酸(50μM)による処理(10分間)により、IP3(10μM)によるCa動員効果は完全に抑制され、また、フォスフォリパ-ゼA2(PLA2)の阻害剤、4ーbromophenacyl bromide(10μM)、によりアラキドン酸遊離を抑制したところ、IP3の効果は10ー20倍ほど増強された。一方、アラキドン酸酸化経路の阻害剤(インドメタシンおよびNDGA、各々10μM)はIP3の効果および外来性アラキドン酸の効果に対しなんら影響がなかった。PLA2は細胞内Caの上昇によって活性化されるとの報告を考慮すると、IP3による生理的Ca上昇に伴いアラキドン酸が遊離され、アラキドン酸が直接、IP3受容体を阻害するとの仮設が提唱される。事実、IP3の効果は一過性であるが、それは4ーBPBの投与によって再度復活する。以上、アラキドン酸によるIP3依存性Ca動員の抑制は生理的反応であり、負のフィ-ドバックによる細胞内Ca濃度の調節機構を形成している。膵外分泌腺細胞では、こうしたアラキドン酸の効果も考慮し、1)Cーキナ-ゼー受容体レベルおよび 2)アラキドン酸ーIP3レベル、での脱感受性反応が存在し、分泌制御の停止シグナルとして機能している。
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