研究概要 |
細胞増殖誘発の細胞内情報伝達機構を解明する手がかりとして,精子によって賦活される卵細胞と,サイトカインによって増殖刺激をうける未分化血液細胞を対象として,これらの刺激に対する即時反応としての細胞内カルシウムイオン(Ca)増加反応を解析した。Ca結合性蛍光試料fura2を細胞内にとりこませ,高感度テレビカメラでとらえた蛍光の変化をイメ-ジプロセッサ-で画像解析し,Ca増加の時間的,空間的変化を解析した。ハムスタ-卵では,これまでの研究により,受精時の精子卵結合の経膜的信号伝達機構は,G蛋白の活性化→イノシト-ルリン脂質の分解→イノシト-ルミリン酸(IP_3)の産生→IP_3による細胞内CaストアからのCa遊離→細胞内Caの増加,という系を結論づけた。今年度は,Ca遊離機構の解析と,この機構の卵成熟過程における発達をくらべた。IP_3をマイクロピペットから電流パルスにより卵細胞内に微量注入すると,注入部位からallーorーnone的に卵全体に伝播するCa遊離がおこることを明らかにした。また,Caイオンをやはり電気泳動的に細胞内に注入すると,ある注入電流でallーorーnone的に卵全体に伝播するCa遊離がおこることを見出した。即ち,Ca自身がCa遊離を誘発する機構が存在することを示した。これらのCa遊離機構は,局所的な細胞外からの刺激に対し,細胞内のCaシグナルが細胞全体に伝播することに役立つはずである。IP_3によって誘発されるCa遊離機構は,卵成熟の過程で徐々に発達し,成熟後期にallーorーnone的な伝播性のCa遊離機構が発達することを明らかにした。未分化血液細胞の実験は,急性巨核芽性白血病細胞由来の細胞株CMKについて,インタ-ロイキン3,GMーCSF(granulocyte macrophage stimuloting factor)投与時の細胞内Ca増加反応の有無を,単細胞レベルで画像解析により採索しているところである。
|