本研究は、神経終末に於ける開口分泌を直接観察しこれに最終的な証明を与えることを目的とする。第一の標本として培養により神経細胞に分化させた副腎随質細胞を用いた。これをノマルスキ-顕微鏡下にCCDカメラと画像処理装置を通して観察すると、0.1から0.4μmの大きさの分泌顆粒がよく見えた(画像処理技置の制御にコンピュタ-を使用)。ガラス微小電極をこれらの突起起始部にあてて(マニピュレ-タ-使用)、1ミリ秒の持続の電気刺激をすると、終末部(成長端)にある顆粒が突然消失し、開口分泌が確認できた。一個の顆粒の反応は16msをきる速いものであった。突然の消失に際して顆粒は全くその位置を変えないこと、16msの時間分解能の精度内では顆粒の膨潤も起こらないことなどがわかった。さらにシ-ケンシャルカメラを使って、エキソサイト-シスの時間経過を高い時間分解能(一駒当り4ms)で観察し、開口直前に顆粒が移動したり膨潤したりすることはないということが定量的に結論できた。また、エキソサイト-シス反応の後に成長端の形が一時的に変形し、その形を整え直すような反応がみられた。電気刺激によって引き起こされる開口放出反応はその数を数えることによって定量化できた。(ビデオの駒の観察にタイムベ-スコレクタ-を使用)。これによると、一回の電気刺激に対する反応に比べて3回の繰り返し電気刺激に対する反応の大きさは3倍以上の大きさを持つというFacilitationの効果が認められた。第二の標本として下垂体後葉の神経終末についての研究を進めた。単離した終末膨大部に電流刺激を加えると微少な顆粒が突然破裂するような変化が見られた。これが分泌顆粒のエキソサイト-シスであることは明白であった。エキソサイト-シスに際して、分泌顆粒の膨大化と移動は起こらないことが分かった。これらによって、神経終末の分泌顆粒の融合と開口は電顕の観察どおり生ずることが証明された。
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