ネコおよびニホンザルの腹側基底核群から特異的侵害受容ニュ-ロンと広作動域ニュ-ロンを検出して、その生理学的性質を研究した。 ネコの腹側基底核群の全周を取り巻く辺縁部に特異的侵害受容ニュ-ロンが分布していることが分かり、この辺縁部を被殻領域と命名した。広作動域ニュ-ロンはその前方を占める巾約300μmの帯状領域に分布していた。特異的侵害受容ニュ-ロンと広作動域ニュ-ロンの両方が体性機能局在機構を示し、場所特異性が認められた。これの結果をさらに確かめるため、腹側基底核群の特異的侵害受容ニュ-ロンと広作動域ニュ-ロンにHRPを注入して、形態学的特徴を調べた。その結果、これら2種類のニュ-ロンの細胞体が腹側基底核群被殻領域内にあることを確認できた。またそれらがI型あるいはII型の投射ニュ-ロンであることが分かった。ニホンザルの腹側基底核群被殻領域にも特異的侵害受容ニュ-ロンと広作動域ニュ-ロンが分布していて、体性機能局在機構を示した。また、特異的侵害受容ニュ-ロンが尾側部にあり、広作動域ニュ-ロンがその前方の狭い領域に分布していた。 上腹部内臓器、心臓および骨盤臓器からの痛覚線維を含む大内臓神経下心臓神経、下腹神経からの入力を受ける後外側腹側核ニュ-ロンの分布を調べた。この入力を受けるニュ-ロンは、皮膚の侵害刺激にも反応する特異的侵害受容ニュ-ロンと広作動域ニュ-ロンで、尾側部被殻領域に分布していた。この結果から後外側腹側核尾側部被殻領域が、内臓痛を大脳皮質へ中継すること、また、内臓痛の伝導路と皮膚の痛みの伝導路が、後外側腹側核で投射部位を共有することが分かった。 中脳背側縫線核あるいはそれに隣接する中心灰白質腹内側部を電気刺激すると、後外側腹側被殻領域に分布する侵害受容ニュ-ロンの反応が抑制された。この抑制に上行性抑制機序が関与することを見出した。
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