研究課題/領域番号 |
01480128
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
酒田 英夫 日本大学, 医学部, 教授 (10073066)
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研究分担者 |
田中 裕二 日本大学, 医学部, 助手 (40179792)
楠 真琴 日本大学, 医学部, 講師 (40205084)
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キーワード | 頭頂連合野 / 単一ニュ-ロン活動 / 視覚刺激 / 奥行運動知覚 / 両眼視差変化 / 大きさ変化 / サル / 三次元空間 |
研究概要 |
物体の接近や離反という奥行運動の知覚は頭頂連合野で行われていると考えられる。奥行運動の主な手がかりとしては網膜像の大きさの変化と両眼視差の変化があり、この二つの要素が合わさって奥行運動の知覚をひき起こす。我々はこれまでに覚醒サルの頭頂連合野から単一ニュ-ロン活動記録法によって奥行運動感受性ニュ-ロ-ンを検索し、そのなかには、主に大きさ変化に反応するもの、主に両眼視差の変化に反応するもの、および両方に反応するものがあることを見いだした。さらに、大きさ変化、両眼視差変化それぞれの単独刺激ではほとんど反応せず、両方を組合せて刺激したときに最もよく反応するものを見つけ、頭頂連合野では階層的な処理によって奥行運動を検出している可能性があることを示した。組織標本を作製して記録部位を確認したところ、これらのニュ-ロンはおもに上側頭溝の深部のMST野周辺と頭頂間溝の深部のVIP野周辺から記録された。頭頂連合野の奥行運動感受性ニュ-ロンのうち、両眼視差変化に反応する大部分のニュ-ロンは正面方向、すなわち両眼の間を目指してくる運動によく反応したが、中には斜め方向、すなわち一方の眼あるいは頭の横の方への運動に選択的に反応するものがあった。このような三次元的方向選択性をもつニュ-ロンはおもにVIP野から記録された。VIPで記録されたニュ-ロンには顔から30cm程度の身体周囲空間内に物体が入ってきた時に反応するものが多くみられた。このようなニュ-ロンは身体周囲空間内での物体の運動を頭や体を中心とした座標系で知覚することに関与しているのではないかと考えられる。以上の結果から頭頂連合野の奥行運動感受性ニュ-ロンが網膜像の大きさの変化と両眼視差の変化という二つの視覚的手がかりを統合して三次元的な運動方向を識別していることが明らかになった。このような性質は三次元空間内での対象物の運動の知覚に適していると考えられる。
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