温熱耐性の形成過程における熱ショック蛋白質(HSPs)の役割

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480134
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 小坂 光男 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30079983)
• 研究分担者: 山下 俊一 長崎大学, 医学部, 助手 (30200679) ; 松本 孝朗 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60199875) ; 大渡 伸 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (80128165)
• キーワード: 暑熱・寒冷順化機序 / 温熱感受性と耐熱性 / 熱ショック蛋白質(HSPs) / 体温調節反応 / 急性温熱ショック / 慢性温熱ショック / ウサギ・ラット・ナキウサギ / 電気泳動法(10%SDS-PAGE)

研究概要

温熱耐性の形成過程における熱ショック蛋白(Heat shock proteins:HSPs)の役割り検索する目的で、家兎、ウイスタ-ラット、ナキウサギに急性(直腸温42℃・15分)または慢性(室温30℃・60%rhに2ー4週間飼育)の温熱ストレス負荷を加え、10%SDS-PAGEを用いて、肝組織におけるHSPsの誘導の有無を比較し、HSPsの温熱生理学的意義などを検討している。
加温法および前処置:ネンブタ-ル麻酔・ビニ-ル袋で被った動物を45℃の恒温水槽で全身加温、直腸温42℃・15分間の急性加温し、20時間後に肝臓摘出、4℃・15,000×g、30分、更に75,000×g、90分遠心し、cytosol fractionを分離し、電気泳動法(10%SDS-PAGE)を実施、慢性温熱負荷群、対照群(22℃・60%rh、2ー4週間飼育)のDataと比較検討した。結果および考案:(1)家兎では慢性暑熱負荷(30℃・4週)を加えると、特に42℃・15分間の急性heat shockを加えなくてもHSP 70KD Family様の構成型の蛋白質の存在を認めたが、再検の必要もある。しかし、この結果は全身加温における耐熱性にHSPsの関与を示唆する。(2)ラットでは急性温熱負荷ではHSP 70KDの誘導を認めたが、慢性温熱負荷で70KDのHSPを認めず、30℃・4週間の飼育がHeat stressとして作用していないか、量的に不足なのか、今後再検討する。(3)ナキウサギは、家兎・ラット以上に急性・慢性温熱負荷でHSPs 70KD Familyの誘導が困難である事が知り、これは、ナキウサギの弱熱耐性と関連性の有無を今後更に検討する。(4)10%SDS-PAGAによって記録された結果は、今後、抗体法やアイソト-プによる詳細なる再確認が必要であり、平成二年度への継続課題となる。(5)Heat shockとは別にCold shockによる新らしい耐寒蛋白質質の誘導の有無を目下実験中で、暑熱順化のみならず・寒冷順化機序の解明を急ぐ。

研究成果

• [文献書誌] Matsumoto,M;et al.: "Effect of fine ambient temperature on thermal sweating at rest and during exercise under thermo-neutral conditions" Trop.Med.31(3). 131-139 (1989)
• [文献書誌] Ohwatari,N;et al.: "Heat loss response induced by local heating of spinal cord with argon laser" Trop.Med.31(1). 147-150 (1989)
• [文献書誌] Ohwatari,N;et al.: "Anallysis of heat loss responses induced by local heating of thermally sensitive tissues in the CNS fo rabbits with an argon laser" Thermal Physiology. 129-134 (1989)
• [文献書誌] Matsumoto,T;et al.: "Influence of thermal stimuli on serum prolactin level in man" Thermal Physiology. 369-374 (1989)
• [文献書誌] Kosaka,M;et al.: "Cerebral blood flow change due to thermal acclimation" Thermal Physiology. 463-468 (1989)
• [文献書誌] Tsuchiya,K;et al.: "Effect of loose restraint on body temperature in spontaneously hypertensive rats(SHR)and stroke-prone SHR(SHRSP)" Thermal Physiology. 563-568 (1989)
• [文献書誌] Ohwatari,N;et al.: "Hyperthermic Oncology(321ー323)" Taylor & Francis London.New York.Philadelphia Ed.by Tsutomu Sugawara & Masao Saito, 1-920 (1989)
• [文献書誌] Kosaka,M;et al.: "Hyperthermic Oncology(330ー333)" Taylor & Francis London.New York.Philadelphia Ed.by Tsutomu Sugawara & Masao Saito, 1-812 (1989)