研究課題/領域番号 |
01480138
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
戸田 昇 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50025590)
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研究分担者 |
安屋敷 和秀 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10167968)
吉田 一秀 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (00210683)
岡村 富夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (70152337)
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キーワード | 脳血管攣縮 / オキシヘモグロビン / 脳動脈 / 血管内皮 / プロスタグランディン / クモ膜下出血 |
研究概要 |
大脳動脈(前・中・後大脳および脳底)を日本ザルおよび雑種成犬より摘出し、ラセン状条片標本を作成して実験を行い以下の成績を得た。 (1)クモ膜下出血後の脳血管攣縮を誘発する主要な原因物質として血液中の成分、中でもオキシヘモグロビン(oxyHb)が注目されている。赤血球溶血上清液およびoxyHbは、サルとイヌの脳動脈を用量に応じて収縮したが、末梢の冠、腸間膜、腎ないし大腿動脈を殆ど収縮しなかった。 (2)これら血液成分の脳動脈収縮作用はシクロオキシゲナ-ゼ阻害薬(アスピリン、インドメタシンなど)およびプロスタグランディン(PG)受容体遮断薬前処理によって強く抑制された。トロンボキサンA_2合成阻害薬処理は同収縮に影響を及ぼさなかった。 (3)活性酸素のスカベンジャ-であるス-パ-オキサイドジスムタ-ゼやカタラ-ゼの処置は血液成分の収縮作用を抑制しなかった。 (4)脳動脈の内皮を除去すると、oxy-Hbの収縮作用は著名に減弱した。 (5)PGF_2α、PGE_2、PGD_2などは脳動脈を強く収縮した。 (6)脳動脈を栄養液に浸漬し、oxyHbの高濃度を適用すると、液中のPGF_2α、PGE_2および6-keto PGF_1αの量は対照に比し有意に増加した。 (7)赤血球溶血上清液ないしoxyHbの処置は、脳動脈における内皮由来弛緩因子を介する拡張反応を著明に抑制した。 以上の摘出サルおよびイヌ脳動脈を用いた実験成績より、赤血球溶血上清液ないしoxyHbによる収縮は、主として内皮より放出される血管収縮性PGによってひきおこされることが結論される。トロンボキサンA_2や活性酸素の関与はないようである。なお、最近行った麻酔イヌおよびサルの実験で、oxyHbの大槽内注入は早期に、血液を大槽クモ膜下腔に注入したのと同様の脳底動脈攣縮をひきおこすことを血管造影により認めている。
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