研究概要 |
我々はこれまでに脳内体液調節中枢である視床下部バソプレッシンニュ-ロン神経核(視索上核・室傍核)における神経刺激伝達物質の受容機構について研究して来た。今回は神経ペプチド、サブスタンスPを視索上核へ微量注入し尿流出量への効果と、それへのバソプレッシンアンタゴニストペプチド、d(CH_2)_5ーDーTyr(Et)VAVP(ハイデルベルグ大学ホフバウエル教授より提供)の前処置の影響を検討した。サブスタンスP(0.1〜5nmol)を視索上核に微量注入する時、時間一,用量依存性の尿流出量の減少がひきおこされた。その50%有効用量(ED_<50>)は約0.4nmolであった。この作用は注入後20〜30分で最大となり、60〜70分で回復した。サブスタンスPのアナログペプチド、[2ーDーPro,7ー,9ーDーTrp]サブスタンスPを視索上核に微量注入した時もサブスタンスPとほぼ同じ時間経過で尿量が減少し、そのED_<50>は約0.85nmolであった。上記のバソプレッシンアンタゴニストペプチドを静注し、40分後にサブスタンスPと[DーPro,DーTrp]サブスタンスPを微量注入する時、これらの抗利尿作用はほぼ完全に遮断された。アトロピンを視索上核に微量注入して前処置する時、サブスタンスPの作用は影響されなかったが、[DーPro,DーTrp]サブスタンスPの作用は強く抑制された。以上より、本神経核におけるサブスタンスPの感受性はかなり高いこと、サブスタンスPと[DーPro,DーTrp]サブスタンスPによる抗利尿作用は、腎臓のハゾプレッシンーV_2ー受容体アンタゴニストにより完全に消失することからバソプレッシンの遊離によることを示していた。また[DーPro,DーTry]サブスタンスPの抗利尿作用がアトロピンで抑制されることから、この作用は主としてアセチルコリン遊離を介していることが示唆された。
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