視床下部バソプレッシンニュ-ロン神経核におけるペプチドの作用

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480142
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 松田 友宏 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (40028361)
• 研究分担者: 河辺 眞由美 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (90117862) ; 津島 宏美 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (10080079) ; 藤本 征五 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (60079994)
• キーワード: 視床下部 / バソプレッシン / ダイノルフィン / 視索上核 / 室傍核 / 微量注入 / 抗利尿

研究概要

免疫組織化学的研究によれば、視床下部バソプレッシンニュ-ロンにK型オピオイドペプチド、ダイノルフィン(1ー13)が共存していることが知られている。ダイノルフィンを視床下部視索上核、室傍核に微量注入する時、10分後から尿流出量が減少し始め、約30分で最大抗利尿作用を示し、約90分で薬物投与前の尿流出量にまで回復した。その50%有効用量は視索上核に微量注入した時も、室傍核に微量注入した時も、約10n molであった。ダイノルフィン、20n molを視索上核、室傍核に微量注入した時の最大作用時に、尿浸透圧は対照のそれぞれ約250%、480%に上昇していた。視索上核へのダイノルフィンの微量注入による抗利尿作用はナロキソンの微量注入による前処置によって抑制されなかったが、室傍核へのダイノルフィンの微量注入による抗利尿作用はナロキソンの前処置によって抑制された。オピオイド受容体に結合できない、1位のチロシン残基のないダイノルフィン(2ー13)の微量注入による抗利尿作用は、視索上核へ注入した時は、ダイノルフィン(1ー13)のそれとほぼ等しかったが、室傍核へ注入した時は、ダイノルフィン(1ー13)の作用より著しく減弱していた。
以上の結果より、ダイノルフィン(1ー13)の視索上核への作用は主として非オピオイド受容体を介しており、ダイノルフィン(1ー13)の室傍核への作用は少なくとも一部はオピオイド受容体を介していることが明らかとなった。このように、視床下部のバソプレッシンニュ-ロン神経核視索上核と室傍核にはダイノルフィン(1ー13)の作用点が局在するが、その受容機構が両神経核において異なっていることが示された。

研究成果

• [文献書誌] Mayumi Mori,Hiromi Tsushima,and Tomohiro Matsuda: "Effect of vasopressin antagonist on antidiuresis by oxotremorine microinjected into the hypothalamic supraoptic and paraventricular nuclei in a waterーloaded and ethanolーanesthetized rat." Japan.J.Pharmacol.49. 357-364 (1989)
• [文献書誌] 森 眞由美,津島 宏美,松田 友宏: "視床下部バソプレッシンニュ-ロン神経核(視索上核)におけるサブスタンスPとそのアナログの作用" 神経化学. 28. 266-267 (1989)
• [文献書誌] Hiromi Tsushima,Mayumi Mori,and Tomohiro Matsuda: "Effects of fentanyl,injected into the hypothalamic supraoptic and paraventricular nuclei,in a waterーloaded and ethanolーanesthetized rat." Neuropharmacology. 29. 757-763 (1990)
• [文献書誌] 森 眞由美,神谷 稔夫,津島 宏美,松田 友宏: "視床下部バゾプレッシンニュ-ロン神経核(神索上核)におけるM_2ームスカリン様レセプタ-によるアセチルコリン遊離調節" 神経化学. 29. 228-229 (1990)
• [文献書誌] 津島 宏美,森 眞由美,松田 友宏: "左右両側視床下部視索上核間の神経連絡." 神経化学. 29. 262-263 (1990)
• [文献書誌] Hiromi Tsushima,Mayumi Mori,and Tomohiro Matsuda: "Effects of dynorphin,injected into the hypothalamic supraoptic and paraventricular nuclei,in a waterーloaded and ethanolーanesthetized rat." Neuropharmacology. (1992)
• [文献書誌] 栗山 欣弥,松田 友宏: "脳と神経の薬理(改訂2版)" 金芳堂, 262 (1989)