遺伝子工学的方法の導入によるGABA_A及びGABA_B受容体の構造と機能の解析

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480143
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 栗山 欣弥 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (20079734)
• 研究分担者: 廣内 雅明 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (70181196) ; 橋本 恒一 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (00172867)
• キーワード: GABA_A受容体 / GABA_B受容体 / cDNAクロ-ニング / mRNA / 機能発現

研究概要

脳内GABA_A及びGABA_B受容体の構造と機能について分子遺伝学的及び分子薬理学的検討を続行し、次の成績を得た。
1.GABA_A受容体は、GABAーgated Cl^-チャネルとα、βなど数箇のサブユニットからなるheterogenousな受容体であることを確認すると共に、ヒト脳からα_1サブユニットをコ-ドする部位をcDNAクロ-ニングにより確認した。
2.上記のGABA_A受容体α_1サブユニットのcDNAを用いて、ノ-ザンブロット解折法により、このα_1サブユニットのmRNAの機能発現実験を行ない、ヒトやウシの小脳のpuly(A)^+RNAの解析から、一種のmRNAより機能発現が行われていることを確認した。
3.一方、ラットやマウスの脳では、4.1K及び4.6Kの長さを持つ2つのmRNAからGABA_A受容体α_1サブユニットが発現していることを確認した。同様な結果は、マウス胎仔の新皮質より得た初代培養神経細胞においても認められた。
4.一方、マウスの遺伝子DNAをEcoRI又はHindIIIで処理し、サウザンブロット解析法で解析したところ、一つのhybridizing bandしか認められなかった。これらの結果は、一箇の遺伝子から多形転写によりGABA受容体のα_1サブユニットの二箇のmRNAが発現されていることを意味している。
5.GABA_B受容体をバクロフェン・アフィニティ・カラムクロマトグラフィにより精製し、約2800倍の精製率を得ることが出来た。この分画にはGTP結合蛋白やCa^<++>チャネルの活性はないことから、可溶化と精製の段階でこれらの解離が起こることが判明した。
6.脳内GABA_B受容体は、アルコ-ル依存形成時には増加を示すことから、アルコ-ル依存の発現にGABA_B受容体が関与すると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] H.Mizutani;K.Kuriyama: "Functional alterations in cerebral GABA_B receptor during alcohol dependence." Japanese Journal of Pharmacology. 55. Suppl.1-349p (1991)
• [文献書誌] H.Mizutani;Y.Ohmori;K.Kuriyama: "Neurochemical Studies on GABA receptor (XXVIII)purication of cerebral GABA_B receptor by affinity column chromatography and its characterization." Japanese Journal of Pharmacology. 55. Suppl.1-165p (1991)
• [文献書誌] K.Kuriyama;M.Hirouchi: "Expression and regulation of cerebral GABA_A receptor." Japanese Journal of Pharmacology. 55. Suppl.1-31p (1991)
• [文献書誌] 栗山 欣弥,廣内 雅明: "Cl^-チャネルと中枢抑制機能" 代謝. 27. 233-240 (1990)
• [文献書誌] 栗山 欣弥,廣内 雅明: "GABAレセプタ-" ブレインサイエンス. 1. 171-178 (1990)
• [文献書誌] 栗山 欣弥,廣内 雅明: "脳内γーアシノ酪酸(GABA)受容体の構造と機能" 蛋白質・核酸・酵素. 35. 1455-1464 (1990)
• [文献書誌] K.Kuriyama;Y.Ohmori: "GABA_B receptor in Mammalian Function. (N.G.Bowery et al eds.)" Wiley Publish.Co (New York), 11 (1990)
• [文献書誌] 栗山 欣弥: "脳のレセプタ-と運動(永津俊治他編)" 平凡社(東京), 17 (1990)