研究概要 |
1.インスリン受容体遺伝子発現調節機構の解析 正常ヒトIR遺伝子の5′端プロモ-タ-領域を単離し、この構造の特徴をすでに報告した。EGFレセプタ-の転写促進因子(ETF)が結合するcore sequence(CCCCCGGC)と同一の配列がIRのN末端上流240〜250塩基対のところに存在することが明らかとなった。このことはいくつかの細胞増殖因子レセプタ-の発現がある条件下では協調的に行なわれる可能性を示唆している。 このプロモ-タ-領域にはSp1が結合する可能性のあるG-Cboxは、N末端上流約400〜440塩基対に3ケ所、上流590〜620塩基対に4ケ所、計7ケ所存在するが、新しいCATassay系を用いたプロモ-タ-領域のdeletion mutantの実験、DNaseI foot printing,gel retardation assayより、IRのN末端より約600塩基対上流にある4つのG-Cboxが通常のIRmRNA転写に必須であり、残りの3つのG-Cboxには通常の状態ではSp1タンパクは作用していないことが明らかとなった。 2.インスリンシグナル伝達機構の解析 従来まで、このチロシンキナ-ゼの基質はいろいろ報告されているがそれらが本当の生理的役割をもつチロシンキナ-ゼの基質であるのかどうか明らかでない。そこで我々はまず、このシグナル伝達の欠損細胞株を分離し、これに発現ライブラリ-を導入し、complementationによりチロシンキナ-ゼの基質を直接クロ-ニングしようと試みた。インスリンレセプタ-とインスリン反応性グルコ-ストランスポ-タ-のcDNAを介して、両者を大量に発現している細胞から、この両者を結ぶmediatorの欠損株を分離できたと考えられるので、今後このmediatorのcDNAの分離を行ないたい。
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