研究概要 |
ラットの脊髄前角細胞〜運動繊維の実験等を用いて,軸索内細胞骨格蛋白の輸送と重合・脱重合動態の解析を行ない,以下に述べるような結果を得た。 軸索内の細胞骨格蛋白を輸送する遅い軸索内輸送の速度は,週齢の進行と共に段々遅くなる。この輸送速度の低下は成長が完全に停止する30週齢以後でも引き続き進行する。4週齢ラットではダイナミック型と安定重合型は一体となって移動し,放射標識後の時間が経過しても速度のやや異なる二つのピ-クに分離しない。7週齢以降30週齢までは標識後の時間が経過すると,安定重合型が主成分の遅いピ-クからダイナミック型に富む速いピ-タが成分が分離してくるのが観察される。更に週齢の進んだ老齢ラットでは,軸索の起姶部に安定重合型に富む大きなピ-クが形成され,時間が経過しても殆ど遠位側への移動が見られない。このピ-クからはダイナミック型のピ-クが形成され除々に遠位側へ移動するが,より若いラットで見られるような安定重合型への再変換はなく、量が段々少なくなることから分解されてゆくものと推定される。 以上の観察から4週齢では脱重合型,ダイナミック型,及び安定重合型の間の相互変換が充分速く行なわれているのでこれらは一体となって移動しているが,成長と共に変換速度が遅くなり,標識後の時間経過に伴って二つのピ-クに分離するのであろう。更に老齢になると相互変換の障害,特にダイナミック型から安定重合型への再変換が殆どおこらないために,ダイナミックは分解されてしまい,軸索の遠位部は細胞体から機能的に切り離された状態となってしまうのであろう。その結果軸索遠位部の変性,軸索内における繊維状構造物の異常蓄積,樹状突起からの異常発芽等がおこり,そしてこれらに続くニュ-ロンの細胞死がひきおこされると推定できる。
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