研究概要 |
イノシト-ルリン脂質情報伝達系は、ホルモンや神経伝達物質の細胞内情報伝達のみならず細胞増殖因子の情報伝達にも関っている。最近特に注目されているのはチロシンキナ-ゼとイノシト-ルリン脂質情報伝達系のクロスト-クである。その接点はホスホリパ-ゼCとPl(3)キナ-ゼであり、チロシンキナ-ゼと複合体を形成し、これらの酸素活性が亢進する。Pl(3)キナ-ゼは、従来のイノシト-ルリン脂質情報伝達系がPl(4)キナ-ゼとPlP(5)キナ-ゼにより生じたPlP_2から2つのセカンドメッセンジャ-,lP_3とDGを産生するのに対し、Plの3位にリン酸基を付加して全く新しいリン脂質を作る。このリン脂質はホスホリパ-ゼCに抵抗性があり、新しい情報伝達系を形成する。この経路は細胞増殖に重要な役割を果たすと考えられているものの、その実体は不明である。我々はPl(3)キナ-ゼを牛胸腺より精製するのに成功した。Pl(3)キナ-ゼは分子量.190Kと110Kであった。190KのPl(3)キナ-ゼは分子量110Kと80Kの蛋白よりなるヘテロダイマ-であった。モノマ-及びヘテロダイマ-の110Kはペプチドマップの同定により同一の蛋白であることがわかった。モノマ-の活性はヘテロダイマ-の活性より高く、モノマ-が活性型であることが判明した。両酵素とも界面活性剤で強く阻害され、基質としてPl,Pl(4)P,Pl(4,5)P_2に作用して、イノシト-ル環の3位にリン酸を付加してPl(3)P,Pl(3,4)P_2,Pl(3,4,5)P_3を生成した。PDGF刺激時や<src>___ーでトランスフォ-ムした細胞ではモノマ-型のPl(3)キナ-ゼ活性が増加していた。
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